散歩の二百九十七話 フリーダムな辺境伯様

 あっ、辺境伯様がいるから、北の辺境伯様からの手紙を渡そう。

 ついでといっちゃなんだけど、辺境伯様なら普通に受け取るだろう。

 僕はアイテムボックスから、預かっていた手紙を取り出しました。


「辺境伯様、北の辺境伯様から辺境伯様宛の手紙になります」

「確認しよう。ふむ、話には聞いていたが、闇組織が武道大会で暴れたか」

「闇組織の関係者は、武道大会で多数のオークを召喚したばかりか屋敷内にも現れてゴブリンを召喚しました」

「我が領も、皆が楽しみにしている収穫祭が近い。そうだな、あの馬鹿の背後関係を調べた方が良さそうだな」


 辺境伯様は何かを試案する表情を見せていたけど、こりゃ男性冒険者は徹底的に取り調べを受ける事になりそうです。

 僕も、あの冒険者には何か裏があるのではないかと思っています。

 

「ギルドマスター、依頼完了の手続きをしておいてくれ。はあ、頭痛のネタが増えちまったぞ」

「ギルドでも、怪しい依頼がないか一層注意しておく。この時期は冒険者の数も増えるからな」


 辺境伯様がギルドマスターに手紙を渡していたけど、二人ともちょっと疲れた顔になってしまいました。

 そりゃただでさえ収穫祭前で忙しいのに、闇組織対策もしないといけないもんね。

 これで話し合いは終わりなので、僕達は辺境伯邸に向かう事になりました。

 冒険者ギルドの前に出た時、僕は何だかおかしい事に気が付きました。


「辺境伯様、馬車が無いようですが。それに、お付きの方や護衛の方もみえません」

「ああ、屋敷から冒険者ギルドまで一人で歩いてきたぞ。下手な護衛よりも、俺は強いからなあ」

「「「おおー! カッコいい!」」」」


 あの、シロ達も辺境伯様の言動はカッコいいんじゃないんだよ。

 辺境伯を預かる者として、ありえない行動なんだから。

 その証拠に、スーとケーシーさんとテルマさんは唖然とした表情になっています。

 でも辺境伯様に何を言っても無駄な気がするので、シロ達以外は諦めの表情をしながら辺境伯様の後をついていきました。


「お館様、こんにちは!」

「おう、お前らも元気か?」

「元気だよ!」

「ははは、そりゃ良い事だ」


 辺境伯邸に向かう途中、街の人が辺境伯様に声をかけています。

 ざっくばらんな性格なので、辺境伯様は街の人にとっても人気があるみたいです。

 そういえば、他の辺境伯領でも辺境伯様は街の人に人気があったよね。

 そして、やはりというか、広大な敷地の辺境伯様の屋敷に到着しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る