散歩の二百九十一話 冒険者ギルドで騒いでいた人

 そして皆で冒険者ギルドに着いたのだが、やっぱりというか問題を起こしている奴がいました。


「何で俺がこの依頼を受けられないんだよ!」

「単にランク不足だからです」

「デイン様、おやめください」

「周りの方の迷惑になります」


 例の三人組の冒険者が、受付の女性と揉め事を起こしていました。

 二人の女性が男性冒険者を必死で止めようとするけど、男性冒険者は全く聞き入れていないぞ。


「うーん、何だかどこかで見た事がある光景だな……」

「その節は、大変ご迷惑をおかけしました……」


 僕の呟きを聞いたスーが顔を赤くして下を向いちゃったけど、南の辺境伯領の時もバクアク伯爵家の三男が大騒ぎしていたっけ。

 で、三男はギルドマスターに滅茶苦茶怒られたんだよね。


「こらー! お前は何を騒いでいる!」

「ギルドマスター」

「げっ……」


 うーん、歴史は繰り返すってこの事を言うんだな。

 受付の奥から出てきたライオン獣人のギルドマスターが、激怒モードで男性冒険者に一喝しているぞ。

 ライオン獣人だけだって、凄い迫力だなあ。

 と、ここであの男性冒険者が、僕の隣りにいるスーの存在に気が付きました。


「おお、スーじゃないか。ここに来て俺の主張が正しい事を説明しろ」


 うん、あの馬鹿の顔を殴りたいな。

 いきなり何を言い出したかと思えば、とんでもない事を言ってきやがったぞ。

 男性冒険者の発言には、流石にスーも呆れている様です。


「はあ。デイン様、ギルドの職員の言う通りじゃないでしょうか。それに、いつも冒険者になるぞと言っておられましたが、カスアク伯爵様の許可は得ましたでしょうか?」

「ぐっ、父上の事は関係ない! 俺は騎士ではなく、冒険者の道を選ぶんだ!」


 あーあ、スーにも正論を言われてしまって、男性冒険者は更に激怒してしまったぞ。

 しかし、相変わらずこの国の問題のある貴族は酷い名前だなあ。

 と、ここでギルドマスターが顎をしゃくりながら、何かを考えていました。


「うーん? カスアク伯爵家? あっ、南の辺境伯領で大騒ぎしたバクアク伯爵家の親戚だ。確か、バクアク伯爵家の問題に口を出して、カスアク伯爵家の者も罰として冒険者ライセンス停止と新規取得の禁止になっていたはずだぞ」

「げっ」

「「「えっ!」」」


 ギルドマスターの指摘を受けた男性冒険者は、しまったという表情に変わり、スーや男性冒険者と一緒にいた女子冒険者もまさかって顔をしています。


「ぐっ!」

「あっ」


 そして男性冒険者が逃走しようと、受付から走り出しました。

 受付のお姉さんが声を上げるけど、逃げるのは不可能だろうなあ。


 ぴかー。

 つるっ。


「わわわ!」


 ずてーん。


 アオが男性冒険者の走る所にピンポイントで氷魔法を発動させ、男性冒険者はものの見事にすっ転びました。

 このタイミングを逃さないギルドマスターではありません。

 受付からひとっ飛びで男性冒険者の下に飛んでいき、肩に担いでいきました。


「全く、面倒くさい事をしやがって」

「……」


 男性冒険者はころんだ時に顔面を打って気絶した上に鼻血を出していたけど、そのくらいは罰として受けて欲しい。

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