散歩の二百九十話 西の辺境伯領に到着

 かたかたかたかた。


「あ、街が見えてきたよ!」


 男爵領の馬車乗り場から馬車便に乗って、だいたい半日が経ちました。

 いよいよ西の辺境伯領の領都が、眼前に広がってきました。

 シロ達は馬車から身を乗り出して、既にワクワクが止まらないみたいです。


「ははは、お嬢ちゃん達は待ちきれないようだな。収穫祭は二週間後だが、もう出店とかも出ているぞ」

「「「本当!?」」」


 一緒の馬車に乗っているオオカミ獣人のおっさんが楽しそうにシロ達に話し掛けているけど、今回は調理する方じゃなくて出店の食べ歩きをしたいなあ。


「それにしても、馬車乗り場ではあんちゃんはあのバカに良いアドバイスをしたな」

「あっ、僕が言ったとバレちゃいましたか?」

「ははは、獣人の耳の良さは凄いぞ。あそこにいた殆どの獣人は、あんちゃんが話したと分かっているぞ」


 シロ達の耳の良さは知っているけど、普通の獣人もかなり耳が良いんだ。

 流石にちょっと恥ずかしくなったぞ。


「あんちゃんとねーちゃんみたいに、獣人に全く偏見がない奴ばかりじゃないからなあ。過去にも人族優先と、大騒ぎをした冒険者がいたぞ」

「因みに、その冒険者はどうなりましたか?」

「どうもこうもないぞ。獣人の冒険者に喧嘩を売って、ボコボコにやられたな。口だけの貧弱野郎だったぞ」


 うーん、西の辺境伯領の冒険者は話に聞く限り屈強な人が多そうだ。

 あの三人組の冒険者は、女性はともかくとしてリーダーの男性は全く使い物にならなそうだ。

 そんな事を思いながら、僕達は無事に街の中に入ります。

 僕達と一緒の馬車と並走していた馬車に乗っていた他の冒険者も西の辺境伯領の冒険者ギルドに向かうそうなので、僕たち以外に総勢二十人の集団で冒険者ギルドに向かいます。


「おお、あんちゃんとねーちゃんは二つ名持ちの冒険者か。人は見た目によらないな」

「嬢ちゃん達も称号持ちだし、スライムに至っては武道大会のチャンピオンか。とんでもないパーティだな」

「俺は北の辺境伯領の武道大会を見ていたが、特にオークキングが現れた時は凄かったぞ。全員が余裕でオークキングを倒していたからな」

「じゃあ、この小さなお嬢ちゃんも本当に強いんだな」

「「「えへへ」」」」


 道中皆で話をしている内に、僕達の強さについての話になりました。

 しかも武道大会を実際に見ていた人もいたので、僕達の話に信憑性が加わりました。

 大きな熊獣人の冒険者がシロ達の頭をぽんぽんとしながら撫でていたけど、西の辺境伯領周辺にいる冒険者は強者に敬意を払うのは本当みたいですね。

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