散歩の二百八十九話 馬車乗り場での一騒動

 翌朝、僕達は西の辺境伯領に向かう馬車便に乗る為に馬車乗り場に向かいます。


「スー、あの三人組は西の辺境伯領に向かうと思うかな?」

「恐らくその可能性が高いかと。この男爵領は各地からの街道が交わる場所なので、王都から西の辺境伯領に向かう街道も通っています」


 リーダーの男性冒険者は人間主義だから、この先の西の辺境伯領に行けばトラブルが起きるのは間違いなしだ。

 何せ西の辺境伯領周辺は獣人が多いし、既にこの男爵領でトラブルを起こしている。

 何でわざわざ獣人の多い領地に向かうのか理解できないけど、要注意人物ってのは間違いない。

 そんな事を思っていたら、馬車乗り場がざわざわとしていた。

 僕とスーは思わず顔を見合わせてから、馬車乗り場に向かっていった。


「おい、人族専用の馬車はないのか!」

「そんなもんないぞ、何を言ってやがる!」

「ふざけやがって、俺は伯爵家の人間だぞ!」


 馬車乗り場では、やはりというかあの男性冒険者が御者の男性に大声で怒鳴りつけていた。

 朝っぱらから、本当に大迷惑な奴だなあ。

 しかも、僕達が乗りたい馬車だったから余計に面倒くさいぞ。

 そして、女性冒険者二人は男性冒険者を止めようと必死になっています。

 仕方ない、ちょっと助言するか。


「もし貴族の方でしたら、馬車を貸し切りにして西の辺境伯領に向かえば良いのではないでしょうか?」

「おお、その手があったか。金はあるから貸し切りにできるか?」

「それは可能だ」


 僕はあえて顔を出さずに群衆の中から声を出したら、男性冒険者と御者は納得したみたいです。

 しかし、金を払うのは女性冒険者なのかよ。

 あの男性冒険者はどれだけクズなんだか。

 遠ざかる馬車便を眺めながら、僕は思わず大きなため息をついてしまった。


「スー、早めに冒険者ギルドに行って情報共有した方が良さそうだね」

「ええ、できれば西の辺境伯領の領主様にもお伝えした方が無難かと」

「だよね。はあ、面倒くさいのがいるなあ……」

「ですね。はあ……」


 僕とスーは、思わず大きなため息をついてしまった。

 幸いにして収穫祭が近いのもあり、西の辺境伯領行きの臨時便が出ていたので三十分後には出発できそうです。

 僕達は馬車便に並ぶ行列に並びました。


「うーん、あの人何だか悪い感じがするよ」

「フランも感じたよ」

「ホルンも」


 シロ達も、あの男性冒険者に何かを感じたみたいです。

 シロ達は獣人でもあるので、何かされない様に注意しないと。


「もし何かしてきたら、シロがぶっ飛ばすよ!」


 訂正、シロ達が無茶をしないように気をつけないと。

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