散歩の二百八十八話 怪しい冒険者たち

 いよいよ西の辺境伯領に近づいてきました。


「この男爵領を抜ければ、西の辺境伯領に着くよ」


 馬車便を降りた僕達は、街を見回していました。


「獣人が、とっても多いね」

「本当だね」

「人よりも多いよ」

「西の辺境伯領は獣人がとても多いから、この男爵領もきっと獣人が多いのよ」


 とっても賑やかな市場を、シロ達が不思議そうに見回していました。

 今までの街だと獣人はだいたい二割から三割ぐらいだけど、この街は数値が逆転しています。

 獣人が多いのもあってか、他の地域よりもワイワイとしています。


「じゃあ、いつも通りに宿を予約しようね」

「「「はーい」」」


 僕達は宿をとろうと、街中を歩いて行きました。

 ちょうど宿が立ち並ぶエリアに差し掛かったので、宿を決めようとした時でした。


「けっ、獣人がやっている宿なんて泊まれるか」


 眼の前の宿から、文句をつけながら出てきた人がいるよ。

 もしかして、人族がやっている宿じゃないと泊まれない人達なのかな?

 見た目は冒険者風の男女三人組だけど、リーダー格の冒険者が不満を漏らしているみたいだ。


「「……」」


 おや?

 今度はリーダー格の男性冒険者についていた女性二人が、スーの事をチラリと見たぞ。

 スーも、表情は変えなかったけど、女性二人の視線に気がついたみたいだ。

 ここでは何だから、宿の中に入ってスーから話を聞こう。


「いらっしゃいませ、五名様ですか? 収穫祭も近くて宿泊客が多く、あいにく全員同じ部屋になりますが」

「ええ、構いません。よろしくお願いします」


 西の辺境伯領で行われる収穫祭を見るために国中から観光客がやってくるので、どの宿も大忙しなんだろうな。

 スーも相部屋で問題ないと言っているし、僕達は部屋の鍵を受け取って部屋の中に入りました。

 因みに宿には食堂が併設してあるので、後で食べに行きます。


「あの三人は、私と同じ歳の王都の貴族の子弟です。リーダー格の男性は伯爵家で、側室の子の四男です。後の二人の女性は子爵家になります」


 やっぱりあの三人組は、王都の貴族だったのか。

 そして、あの男性は獣人を蔑んでいる。

 絶対にトラブルになりそうだぞ。


「実は、あの女性二人は私の知り合いでして、あの男性の実家が二人の寄親なのです」


 何となくあの三人組が集まっている理由が分かったが、あの男性がリーダーなら絶対にうまくいかないだろうなあ。


「あの三人組が何をしたいのか全く分からないので、正直な所様子見をだよなあ」

「ですね。ただ、あの男性は全く強くないので、そこは懸念材料です」


 もうすぐ西の辺境伯領に着く所で、何だかトラブルの予感です。

 こういう時は、トラブルに巻き込まれる事が多いんだよなあ。

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