散歩の二百八十六話 土砂崩れ復旧作戦

「うう、シュンさんすみません。まさか、抱きついたまま寝てしまうとは思いませんでした……」

「しょうがないですよ。シロ達も僕に抱きついたまま寝ていましたし、それだけ怖い思いをしたのですから」


 目が覚めたスーは、昨夜の失態を僕に詫びていました。

 まあ、雷を怖がる人は多いし、シロ達も滅茶苦茶怖がっていたもんね。

 そう思いながら、僕達は着替えを済ませて土砂崩れの現場に向かいます。


「お、これだな。結構山肌が崩れてるな」

「しかし、この土砂をどうにかしないといけないですね」


 山肌は大きく崩れていて、かなりの土砂が街道を塞いでいました。

 大体、幅二十メートルは崩れているでしょうか。

 幸いにして崩れた土砂の高さは一メートルもありません。

 大雨が降ったのが夜中だったので、人的被害は全くないみたいです。

 しかし、非常に残念なお知らせです。


「うーん、僕やアオのアイテムボックスでも土砂が入らないなあ」


 アイテムボックスで一気に土砂を除去できないので、この土砂を別の手段で運ばないといけません。

 試しにスコップで土砂を少量に分けると、アイテムボックスに収納できます。


「うーん、土砂を小分けにしてかきだしつつ、土魔法で山肌を補修していこう」

「「「おー!」」」


 人力作戦にならざるを得ないが、この土砂をどうにかしないと僕達の旅もプラン変更しないといけません。

 僕達だけでなく、宿場町の人も手伝って復旧作業が始まりました。


「おりゃー!」

「おお、嬢ちゃんのパワーは凄いなあ」

「儂らも負けられないな」


 ここで最も頼りになるのがシロのパワーです。

 物凄い勢いで土砂を掘り進めるので、地元の人のやる気に火をつけています。


「フランも負けないよ」

「ホルンも頑張る」


 フランとホルンも身体能力強化が使えるので、無理をしない範囲で土砂を掘り進めています。

 しかし、人工ブルドーザー化しているシロのマネはしなくて良いですよ。

 こういう現場だと怪我人も出るので、スーは治療をしつつ土砂の撤去を手伝います。


「とりあえず、今見えている山肌を補修しよう」


 僕とアオは崩れた山肌を魔法で補強しつつ、シロ達がかきだした土砂をアイテムボックスに入れて、宿場町が指定した土砂捨て場に捨てていきます。

 こんな感じで作業を進めていたら、昼食の時間になりました。


「いやあ、あんちゃん達がいたから助かったぞ。俺達で土砂を取り除こうとしたら、何日かかるか分からねえや」

「そうだな。白猫の嬢ちゃんもパワフルだし、この分だと直ぐに開通できそうだな」


 宿場町のおかみさん達が炊き出しをしてくれたので皆で食べていますが、想像以上におじさん達の表情も明るいです。

 でも、上手く土砂をアイテムボックスに入れる方法があればなあ。

 あっ、別の方法を試してみよう。

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