散歩の二百八十五話 嵐の夜と土砂崩れ
無事に男爵領での問題も解決し、僕達は再び旅を続けます。
からからから。
「お兄ちゃん、今日は山沿いの宿に泊まるんだよね?」
「そうだね。宿場町にある宿に泊るよ」
僕達は小さい山の峠を越える為に、山沿いにある宿場町に向かっています。
今日は宿泊するだけなので、何もしない予定です。
しかし、宿に着いたところで状況が一変しました。
ゴロゴロゴロ!
「「「うにゃー!」」」
「いやー!」
夕飯を食べて寝ようとしたタイミングで、大雨と雷が辺り一帯を襲いました。
雷の大きな音と落雷の際の振動で、女性陣は耳を押さえながら僕にギューッとしがみついています。
アオも女性陣の頭をなでなでしながら何とか落ち着かせようとしているけど、こりゃ当分駄目だな。
獣人であるシロとフランは音に敏感だから、特に雷は駄目だろうなあ。
「スーも雷は駄目なんだな」
「うう、駄目です、怖いです……」
スーも涙目で僕の顔を見上げているけど、何だか今のスーは子どもっぽくてとても可愛いです。
ゴロゴロゴロ、バリバリバリ、ズドーン!
「「「「ぎゃー! 雷嫌い!」」」」
「はいはい、大丈夫だからね」
こうして暫くの間、僕は女性陣を落ち着かせるので精一杯でした。
そして叫び疲れたのもあり、雷が落ち着いた頃には女性陣は僕にしがみついたまま眠ってしまいました。
というか、僕も女性陣を落ち着かせるために体力を相当使ったので、女性陣が寝ると共に僕も眠りについていました。
ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。
「うーん、もう朝か。体が動かないぞ」
翌朝、僕は自分の体が感じる重さで目が覚めました。
女性陣が、全員僕にしがみついて寝ていたのです。
いやいや、よく考えたら貴族令嬢のスーが未婚男性と同衾ってのは不味いんじゃないですか?
そう思っていたら、スーはホルンを抱いてすやすやとまだ寝ていました。
僕は上手くシロとフランの拘束から抜け出して、ベッドから脱出しようと思いました。
「「うーん」」
しかし、シロとフランは僕にしがみついたまま離れませんでした。
ここで僕はあるアイディアを思いつきました。
このままシロとフランを抱っこしたまま、別のベッドに移動すれば良いんじゃないかな?
僕がその作戦を実行しようと、シロとフランを抱っこしてベッドから起き上がった時でした。
ドン。
「お客様、大変です。この先の道で土砂崩れが発生しました」
あ、おかみさんが緊急事態発生を告げに部屋のドアを開けてきました。
そのドアを開けた音に女性陣は……
「「「すー、すー」」」
全く起きずにすやすやと眠っていました。
僕は苦笑しながらシロとフランを抱っこしたまま、起きてきたアオと一緒におかみさんの方に向かいました。
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