散歩の二百八十四話 男爵様からの謝罪
重い気持ちの中起きた僕達でしたが、更に気持ちを重くする事態が。
「あの、男爵様の使いの方が来ております」
宿のおかみさんが、申し訳ない顔をしながら僕達に来客があった事を告げました。
僕とスーはお互いに顔を見合わせてがっくりとしながらも、玄関に向かって行きました。
前に別の男爵領で、領主の暴走で嫌な事があったもんな。
その事を覚えているシロ達も、どよーんってなっています。
「御館様より、昨晩は申し訳ないとの言付けを受けております。つきましては、謝罪をしたいとの事ですので屋敷まで来ていただけませんでしょうか」
おお、今回は大分まともな対応だったぞ。
執事っぽい人が、申し訳なさそうに僕に話をしてきました。
特に問題なさそうなので、僕達は迎えの馬車に乗り込みます。
「我が領の者が大変失礼な事をした」
そして屋敷に着いて応接室に案内されると既にダンディーな男爵が待っていて、いきなり僕達に謝罪をしてきました。
あっけに取られながら、そのまま男爵から話を聞く事になりました。
「実は、あの店は名目上は我が男爵家が経営している店なのだ。いつ頃か、あの店がおかしな経営をしていると聞いていたんだ。そして、昨夜我が領の兵がたまたまあの場にいて、直ぐに報告があったのだ」
おお、男爵家直営のお店であの対応は不味いでしょう。
男爵もその事を理解しているのか、かなり渋い顔でした。
「店は一週間営業停止にし、店内の清掃や備品の整備など基礎から見直す。そして、不誠実な調理をしていた料理責任者とそれを認めていた店舗オーナーは捕縛した。調べてたら商人と癒着があって、賄賂なども発覚したのだ」
うわあ、あの一見様には不味い料理を出すという最悪な接客に加えて賄賂もあったとは。
もうこれでは、僕達からは何もいえないなあ。
「今まで直営店の不正を見抜けなかった私の責任もある。本当に申し訳ない」
「男爵様、謝罪を受け取りましたので顔を上げて下さい。僕達はもう大丈夫ですから」
「ありがとう」
男爵様からの謝罪はこの位にして、改めて話をする事になりました。
「男爵領では、今が夏野菜の収穫時期と聞いております」
「我が男爵領は農業が盛んで、まさに今が収穫の最盛期だ。一部秋野菜も作っておる」
周辺領地にも野菜を供給していて、食料の一大生産地って訳ですね。
「おお、そうだ。謝罪にもならないかもしれないが、我が領の野菜をプレゼントしよう。生で食べても美味しいぞ」
「「「やったー!」」」
そして男爵様からのご厚意で、野菜を沢山貰う事になりました。
街に行かなくても新鮮な野菜が手に入ったので、シロ達は大喜びです。
こうして、男爵領でのゴタゴタは無事に解決しました。
夜は、頂いた野菜をたっぷり使った夏野菜カレーを作りました。
勿論、皆大満足で完食していました。
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