散歩の二百八十三話 散々な夕食

「おいおい、本当に二つ名持ちの冒険者か? ただの子連れの冒険者じゃないのか?」


 おっと、ここでニヤニヤしながら厨房から責任者っぽい人が現れました。

 どうもこの人は、僕達を普通の冒険者だと思っているみたいですね。

 なので、アオがテーブルの上に武道大会チャンピオンの証のメダルをどんと出しました。


「こ、これは武道大会チャンピオンのメダル。辺境伯家の刻印まであるぞ」


 厨房の責任者っぽい人はアオがテーブルに出したメダルを手に取り、表裏をひっくり返しながら良く見ていました。

 そして、僕はスーとアイコンタクトをとりながら、あるメダルをアイテムボックスから取り出しました。


「これは東の辺境伯様から預かったメダルになります」

「は、はあああ!」


 僕が出した東の辺境伯様から預かったメダルを、厨房の責任者は顔を真っ青にしながら眺めていました。

 すると、厨房の責任者は急いで店の奥に引っ込んで行きました。


「料金払って帰ろうか。帰ったら簡単な物を作るよ」

「「「「やったー!」」」」


 もうこの店に一秒でも長くいたくないので、僕達はテーブルの上にお金を置いて店を出ようとしました。

 すると、厨房の責任者が小太りの男性を連れて戻ってきました。

 うーん、小太りの男性がオーナーっぽいけど、何だか守銭奴って表情をしているなあ。


「こ、この度は料理の件でご迷惑をおかけし申し訳ありません。お詫びに代わりの料理をご用意いたしますので」

「いえ、結構です。では」

「ちょちょちょちょ、ちょっとお待ち下さい」


 僕達が気にせずに帰ろうとしたら、オーナーっぽい男性が僕の腕を掴んできました。

 僕達が何かをしてくると思ったんだろうな。


「別に、僕はこのお店をどうこうするつもりはありません。皆さんは楽しんでいるみたいですし、僕達がこの場にいないほうが良いでしょう」

「ちょっと!」


 オーナーっぽい人が何かを言おうとして後ろから僕達を呼び止めようとするけど、僕達はそれを無視をして宿に戻りました。

 はあ、散々な夕食だったなあ。


「時間がないから、ササッと作るよ」

「「「はーい」」」


 部屋に戻ると、僕は簡単な野菜炒めと魚のつみれ汁を作りました。

 シロ達もスーも美味しそうに食べてくれて、僕も一安心です。

 でも、明日は街を歩く予定だけど、今日あの食堂で会った人もいると考えるとどうしようかなって考えちゃうね。

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