散歩の二百八十一話 冒険者との手合わせ

 ぴょんぴょんぴょん。


「アオ、お帰り!」

「魔法、凄かったね」

「ホルンはあんな魔法はまだ出来ないよ」


 帰ってきたアオと戯れているシロ達を、冒険者の男女が見つめていました。


「いやあ、このスライムは凄いな。流石は武道大会の優勝者なだけあるぞ」

「ええ、でも強い相手とやりたいと思っちゃうのは冒険者の性だね」


 オオカミを倒したアオの活躍を見て、冒険者の男女が更にやる気になりました。

 アオもあのくらいの魔法では全然疲れていないので、手合わせを行う事に。

 二人は剣士タイプなので、アオも攻撃魔法抜きの剣士スタイルで戦います。

 両者とも、身体能力強化のみ使用します。


「では、始め!」

「「「アオー、頑張れー!」」」


 僕の合図で、お互いに距離を取って剣を構えます。

 勿論アオは、木剣を構えています。

 いつもの応援団の声を受けながら、


 じりじりじり。


 お互いに剣を構えながら、徐々に距離を詰めていきます。


「はあ!」

「せい!」


 刹那、冒険者の男女が一気に距離を詰めてコンビプレーでアオに切りかかりますが、アオは余裕を持って剣を避けて木剣で剣を受け止めていきます。

 その後も冒険者の男女は互いにアオに切りかかりますが、アオには全く当たりません。

 完全にアオは、冒険者の男女の様子見をしているだけですね。


 しゅっ。

 ちょんちょん。


「「あっ!」」


 そして、勝負は一瞬で決着しました。

 アオが素早く二人の背後に回り込み、木剣で二人の足をちょんちょんと突っついていたのです。

 冒険者の男女はびっくりした表情でしたが、直ぐに負けを認めました。


「いやあ、強いな。流石はチャンピオンだ。俺らもそこそこ強い自信があったが、全く歯が立たなかったな」

「そうね。でも、武道大会の優勝者の強さを知る良い機会だわ。新たな目標ができたわね」


 負けはしたけど、冒険者の男女はとても良い笑顔でした。

 僕が見る限り、普通に予選は突破して本戦も一回戦は勝てそうな実力はありそうだよ。

 その後も馬車の中で、冒険者の男女はシロ達を通訳に模擬戦の感想を話し合っていました。

 皆にとっても、良い手合わせになって良かった。

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