散歩の二百四十一話 エキシビションマッチその二

「じゃー、いくよ!」

「いーよー」


 しゅっ、バキンバキン!


「こ、今度は高速での格闘技戦が始まった! フラン選手とホルン選手、舞台を縦横無尽に動いています」

「は、はえー!」

「な、何なんだあの動きは?」


 フランとホルンは魔法戦をやめて、格闘技戦に入りました。

 二人とも身体能力強化を使って、ステージを所狭しといった感じで動いています。

 観客にとってはフランとホルンの動きはかなりの速さっぽいけど、実際にはシロとアオの方がまだまだ速いぞ。


「うーん、フランとホルンは遊んでいるみたいですね」

「いやいや、とんでもない遊び方なんですけど」


 シルビアさんも、フランとホルンの動きにびっくりしています。

 朝の訓練を一緒に始めたのも昨日からだから、まだ動きの速さに慣れない様ですね。


「今度はこっちにしよー?」

「分かった」


 カンカンカンカン。


「こ、今度はマジックバッグから木剣を取り出して、またもや高速で打ち合っています!」

「いーぞー、やれやれー!」

「ははは、こりゃ凄いなあ」


 今度は木剣を使って打ち合っています。

 ただ、速く打ち合っているだけだから、剣技もへったくれもないな。

 でも、二人の速さに慣れてきた観客が、大盛りあがりでフランとホルンに歓声を送っています。

 傍目からしたら、かなり盛り上がっているからなあ。


 ピピピピ、ピピピピ。


「タイムアップ、そこまで」

「あ、終わっちゃった」

「ここまでだよ」


 と、ここでタイムアップです。

 エキシビションマッチだったから、時間を短めに設定していた様ですね。


「うおー、凄かったぞ」

「カッコ良かったぞ!」


 二人の戦いに、観客は拍手をしながら称えていました。

 余興としては中々の出来だったからね。

 フランとホルンは、シロとアオが待つ舞台袖にニコニコしながら走っていきました。

 そして、シロとアオと一緒に観客に向けて手をふりふりとしています。

 観客から大きな拍手が起こりました。


「朝の訓練を見ていたので何となく分かりますけど、フランちゃんもホルンちゃんも凄いですね」

「魔法使いとしての素質は、僕なんかよりもありますから。格闘技は、シロとアオの影響ですね」


 シルビアさんも、改めてフランとホルンの強さにびっくりしていた。

 フランとホルンも、資質は良いものがあるからなあ。

 余興として盛り上がったし、これで良いとしておきましょう。

 そんな事を思っていたら、シロ達が帰ってきた。


「「ただいまー」」

「おかえり、楽しかったか?」

「「うん!」」


 シロ達は、ニコニコしながら答えていた。

 すると、シロとフランがとんでもない事を言ってきた。


「シュンお兄ちゃんとスーお姉ちゃんのエキシビションマッチをやるんだって」

「お昼って言ってたよ」

「はっ?」


 おいおい、何言ってるの。

 僕達までエキシビションマッチをやるのかよ。


「おお、兄ちゃんもやるのか」

「あの姉ちゃんも、昨日変な奴をぶっ飛ばしていたなあ」


 この話を聞いた屋台のお客まで、思わず大盛りあがりとなってしまった。

 ここでやらないって選択は出来なさそうだ。

 僕はガックリとしながら、料理をする事になった。

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