散歩の二百四十話 エキシビションマッチその一

 アオの試合も終わったので、シロ達もこっちに来るかなと思ったら何やら辺境伯様がシロ達に話をしているぞ。

 どちらかというと、フランとホルンに話をしている感じだな?

 何をしているんだろう?

 すると、フランとホルンが舞台に上がったぞ?

 そして辺境伯夫人様が、マイク型の魔道具を手にした。


「えーっ、選手到着遅延により第二試合の開始が遅れているので、ここでエキシビションマッチを開始します」

「「「うおー!」」」


 え?

 何で、フランとホルンのエキシビションマッチが始まるんですか?

 フランとホルンも観客に手を振っているぞ。


「なお、第二試合を戦う選手は到着しているのでご安心を。寝坊したとの事です」

「「「ははは」」」


 おい、誰だよ寝坊した馬鹿は!

 よく見ると、舞台の近くで剣士っぽい人がゼーゼーと荒い息を上げていた。

 しかも、あの怪しい魔法使いの対戦相手じゃないですか。

 あーあ、次の試合はもう決まったもんだな。


「赤コーナー、屋台の小さな店員さん。実は僅か五歳ながら称号持ちの冒険者。ドラゴニュート、フラン!」

「イエーイ!」

「確か屋台の小さな店員じゃなかったか?」

「称号持ちの冒険者だったとは」


 辺境伯夫人様によるフランの紹介で、観客がざわざわとしています。

 そりゃ、五歳児が称号持ちの冒険者だとは思わないよなあ。

 当のフランは、観客に向けて元気よく手を振っています。


「青コーナー、救護テントの癒しです。こちらも五歳ながら称号持ちの冒険者。天使族ホルン!」

「ど、どうも」

「あの嬢ちゃんも称号持ちの冒険者か」

「そういえば、昨日魔法でナンパ野郎をぶっ飛ばしていたよな」


 ホルンも称号持ちだと知ると、再び観客がざわめきます。

 ホルンは控えめに手を振っています。


「なお、両者とも魔法を使った格闘戦を行いますので、魔法障壁装置を稼働します」

「「「いーぞ、やれやれ」」」


 いざ試合の準備になると、観客は落ち着きを取り戻して盛り上がりを見せています。

 魔法障壁装置も稼働して、準備万端です。


「では、エキシビションマッチ。開始!」

「行くよ、ホルン」

「うん、フランちゃん」


 チュイーン。


「おーっと、いきなり両者がとんでもない魔力を溜め始めたぞ」

「な、何だ何だ?」

「嬢ちゃんがすげー魔力を溜めているぞ」


 おいおい、フランもホルンもいきなり魔力を溜め始めた。

 観客も驚いているけど、僕もびっくりですよ。


「「行くよー」」


 ズドーン、ドッカーン!


「い、いきなり水と聖魔法が激突した! 舞台中央で、激しい爆発が起きました!」

「うわ、衝撃波がこっちにも来たぞ」

「魔法障壁装置、持つかな?」


 派手な魔法のぶつかり合いに、観客が不安になっています。

 というか、魔法障壁装置の作った魔法障壁を一部打ち破っていないか?


「ふ、フランちゃん、ホルンちゃん。舞台が壊れちゃうから、魔力の溜めと圧縮はなしね」

「「はーい」」

「「「ほっ」」」


 流石にこの後の武道大会の運営に支障が出るので、たまらず辺境伯夫人様がフランとホルンにもう少し手加減する様に言っています。

 フランとホルンが手をあげて返事をしたのを見て、観客は明らかに胸を撫で下ろしていました。

 うちのフランとホルンがどうもすみません。

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