散歩の二百三十九話 武道大会本戦二回戦目

「それでは、本戦二日目。ベストフォーをかけた戦いが始まります」

「「「うおー!」」」


 おっと、今日の第一試合が始まったぞ。

 僕は屋台で料理を作りながら、アオの試合を見ることにしました。

 屋台を手伝っているシルビアさんや侍従も、接客や料理をしながらチラチラと舞台を見ています。


「青コーナー。もはや、優勝候補と言っても良いでしょう。昨日は剣技も披露したが、本職は魔法使い。アオ選手!」

「「「アオ、がんばれー」」」

「今日も頑張れよ!」

「ふりふりしている、可愛い」


 もはや説明不要の人気者になったアオは、今日も観客に向けて触手をふりふりとしています。

 今日は舞台の前方に子どもが沢山いて、アオに一生懸命声援を送っていました。


「赤コーナー。その巨体で対戦相手をなぎ倒してきました。格闘家、ブルドック選手!」

「大きい!」

「筋肉ムキムキだ!」


 今日のアオの対戦相手は、身長二メートルを超える筋肉ムキムキの格闘家で、スキンヘッドのひげもじゃもじゃだった。

 そして、何故か上半身裸です。


「なお、アオ選手は格闘技戦を選択しました。身体能力強化以外の魔法並びに武器の使用はしないと宣言しております」

「すげー、今度は格闘技戦を選んだぞ」

「あのスライム、何でもできるなぁ」


 アオは、またもや相手の戦闘スタイルに合わせた戦いを選択した。

 観客も、アオの戦い方にびっくりしています。

 でも、アオの場合は格闘戦は持ってこいだろうな。

 そしてお互い握手して、開始線に下がります。


「それでは、第一試合開始!」

「「「うおー!」」」


 試合開始の合図で、観客は大盛り上がりです。

 しかし、アオと格闘家はお互いに構えたまま開始線から動きません。


「おーっと、アオ選手にブルドック選手、お互いに相手の出方を伺っているのか全く動きません」

「おお? どうしたどうした?」

「何かあったか?」


 観客は動かない二人を見て、どうしたのかとざわざわしています。

 しかし、見る人には二人の間で見えない攻防が繰り広げられています。

 現に格闘家は汗だくで、アオの気迫に押されていました。


 しゅ。

 ズドーン。


「ぐふ……」


 バタン。 


「あー、アオ選手の強烈な体当たりが炸裂した! ブルドック選手、起き上がれない。審判が試合を止めた!」

「「「わーい」」」

「す、すげえ。全く見えなかったぞ」

「何がおきたんだ?」


 そして、勝負は一瞬でついた。

 アオが格闘家めがけて、体当たりを仕掛けたのだ。

 格闘家はアオの攻撃を避けられず、気を失ってうつ伏せで倒れてしまったのだ。

 直ぐに審判が試合終了を宣言し、アオも格闘家を治療します。

 そのまま、格闘家は担架に乗せられて救護テントに運ばれました。

 一瞬の出来事なので、観客も何が起こったか良く分かっていませんでした。

 でも、辺境伯夫人様は冷静に何があったかを伝えていたので、アオの体当たりが見えていた様だぞ。


「アオ選手、ベストフォー進出です!」

「「「わー」」」


 改めて辺境伯夫人様がアオの勝ちを宣言します。

 すると、観客から大きな歓声が上がりました。

 アオは触手をふりふりして、観客の声援に応えていました。

 中々ない派手な勝ち方だったから、インパクトは大きかったな。

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