散歩の二百三十七話 謎の襲撃者

 色々あったけど、無事に屋敷に戻る……ではなりませんでした。

 それは屋敷への帰り道の途中の事でした。


「お、このスライムをやればいいんだな」

「ははは、弱そうな連中だな」

「簡単な仕事だな」


 突然、僕達の目の前に如何にもならず者っ感じの男がナイフを片手にヘラヘラしていた。

 なんだ、こいつらは?


「変な服装」

「メガネかけてるよ」

「はげてる」

「おい、一人だけピンポイントで悪口言うな!」


 シロ達がならず者を指さして色々言っているけど、ホルンだけ一人の頭を指さしていた。

 うーん、なんだこのカオスな状況は?


「あーあー、つまりはこのアオをどうにかしようとしているんだな?」

「にーちゃんは話が早くて助かるな。まあ、俺らと遊んでくれると助かるぞ」

「「「悪いやつだ!」」」

「ははは、威勢のよい嬢ちゃんだな」


 コイツラの背後にいるのは、大会を壊そうとしたいのかはたまた別の意図があるのか。

 

「えい!」

「やー!」

「とー」


 バキン、ボカン、ドーン。


「「「ギャー!」」」


 でもシロはともかくとして、フランとホルンに一撃でやられるレベルではアオなんて倒せるはずないけどなあ。

 まあ、ナイフを持って脅してきたから、正当防衛は成立するでしょう。

 僕は、スーとシルビアさんと手分けしてノックアウトしたならず者を縛り上げます。


「おい、こっちから大きな声が聞こえたぞ」

「あっ、シュンさんにスーさんですね」

「これはどういう状況ですか?」


 ならず者が大声を上げてぶっ倒れたので、ちょうど巡回していた兵が僕達の所にやってきた。

 無料治療した事のある人だから、直ぐに僕達の事に気がついてくれた。

 まあ、この領都の兵は殆ど治療したことがあるから、僕達の事を知っているんだよね。


「コイツラね、シロ達を脅したんだよ」

「アオを倒すって言ったんだ」

「弱かったけど」


 シロ達も、顔見知りの兵に何があったかを伝えていた。

 シロ達の話を聞いて、兵の表情が変わった。


「となると、ベストエイトに進出した他の参加者の所にも不審者が行っている可能性があるな」

「まだ事件の背景が分からないので、何とも言えないですけど」

「俺、兵舎に行ってきます」


 僕も兵と話をするけど、僕達を襲ったならず者は完全にのびてしまっているので話が聞けません。

 ここは、安全策を取ったほうが良いですね。

 ならず者は兵に任せて、僕達は屋敷に向かいます。


「話は聞いたぞ。何やらきな臭くなったな」

「はい、何が起きているか確認が必要ですね」


 屋敷に着くと、兵の報告を聞いたのか辺境伯様が僕達に話しかけてきた。


「ただ大会中のアオの強さを見れば、そう簡単に喧嘩を売ることはないはずですけど」

「大会は見ていなく、指示だけを受けた可能性はある。取り敢えず捕まえた奴から情報を得ないとならないな」

「そうですね。聴取待ちですね」


 という事で、僕達も身の安全を確保しつつ聴取結果を待つ事にした。

 明日の朝には、のびてしまったならず者も覚醒して欲しい。

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