散歩の二百三十二話 皆で朝の訓練

 翌朝、僕達は会場に向かう前にいつもの訓練を行います。

 勿論、シルビアさんも訓練に誘います。


「魔力循環ってこんな感じで行うんですね。勉強になります」


 早速僕が一人で行う魔力循環を教えると、シルビアさんは関心した様に答えていました。

 その次は、二人で行う魔力循環です。


「一定量を循環させる様に集中して下さいね」

「は、はい。む、難しいですね」

「最初は私も駄目でした。少しすれば慣れますわ」


 シルビアさんは、スーと手を繋ぎ四苦八苦しながら魔力循環を行っています。

 最初は大変だけど、続けていくと効果がはっきり出るからね。

 続いては、魔力を操る訓練です。

 シルビアさんは小さな風の球を発動させて、大きくしたり小さくしたりを繰り返しています。

 

「魔力を圧縮させると、少ない魔力でより強い攻撃ができますよ」

「はい、それは身をもって知りました。複数魔法が操れるように頑張ります」


 スーに加えて、アオも一緒に魔力の圧縮を行っています。

 シルビアさんは、昨日の試合でアオの圧縮したエアバレットに自分の魔法を打ちぬかれたからなあ。

 因みにフランとホルンは、僕も様子を見ながらいつもの訓練を続けていました。

 続いてはフィーナさんも合流して、剣技の訓練です。

 シルビアさんは見かけによらず力があるので、僕と同じショートソードを使うことにしました。

 早速木剣を持って、素振りからの簡単な打ち合いを行います。


 カンカンカンカン。


「あの、流石にあんな高速な打ち合いはできません」

「マネしなくて良いですよ。基礎から始めましょう」

「そうですわ。あれはマネできません」

「は、はい……」



 シルビアさんの視線の先には、シロとアオが身体能力をかけて打ち合っていました。

 あまりの高速な打ち合いに、シルビアさんは唖然としていました。

 フィーナさんも苦笑するレベルだけど、あの二人は気にせずに基礎から固めましょう。

 フランとホルンは、スーから色々と指導を受けています。


「はあ、アオさんには相当手加減されていたんですね。昨日は普通のスライムだと思っていました」

「まあ、見た目は小さいスライムですから。今日の本戦は流石に警戒されると思いますよ」

「そうですね」

 シロ達とひょこひょこと整理体操をしているアオの事を、シルビアさんが遠い目をしながら見ていました。

 シルビアさんはスライムに負けたと思っているけど、シロは玄人の冒険者や兵にも負けないでしょうね。

 そして、シルビアさんの質問は僕達の事に移ります。


「そういえば、何でシュンさんは辺境伯様の屋敷に滞在しているんですか?」

「それは、スーお姉様が男爵家令嬢だからですわ」

「はっ? えっ?」


 あ、フィーナさんがスーの事を素直に答えてしまった。

 シルビアさんは、フィーナさんとスーの間を見返していた。

 因みにスーはフランとホルンと共に整理体操をしていて、話を聞いていません。


「スーが男爵令嬢というのは本当ですよ。でも、冒険者活動をしている間は特に気にしなくて良いですよ」

「そうですわ。どんなスーお姉様でも素敵ですわ」

「わ、分かりました」


 シルビアさんに強引に納得してもらって、この場は終了です。

 スーには、会場に行く時にこの話を伝えておこう。

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