散歩の二百三十一話 今日はゆっくりしましょう

「すみません、何も知らなくて申し訳ないのですが、レッドスコーピオンって何ですか?」


 あっ、そうか。

 シルビアさんは、レッドスコーピオンの事を何も知らないんだっけ。

 手を上げて質問してきたので、辺境伯様が答えてくれました。


「簡単に言うと、全国を股にかける国内最大規模の犯罪者組織だ。」

「ありがとうございます、そんな組織があるんですね」

「冒険者をしていたら、そのうち聞く名前だ。末端構成員も多いからな」


 僕達はいきなり幹部クラスとやりあったもんな。

 おや?

 もしかしたらもしかして。


「辺境伯様、宿で捕まえた犯罪者は、レッドスコーピオンの構成員の可能性がありますか?」

「というか、確定で良いだろう。捕まえたヤツにサソリの入れ墨があった」

「新たな組織員の勧誘だったんですね。面倒くさい事をしますね」

「はあ、全くだ」


 まあ、面倒くさい話はここまでにして、夕食にしましょう。

 その間に、シルビアさんのリュックを侍従に預けて直して貰うことになりました。


「うわあ、こんな豪華な食事は初めてみました」

「マナーなど気にせずに、好きなように食べるが良い」

「はい、ありがとうございます」


 沢山の料理に、シルビアさんは目を輝かせています。

 今まで食べた事がない料理だろうね。


「これ美味しいね」

「こっちも美味いよ」

「もぐもぐ」


 相変わらず、シロ達は遠慮なく食べています。

 三人とも今日は良く働いたし、お腹も空いたんだろうね。


「スーはあの後ナンパとかあった?」

「何回もありましたよ。あまりにもしつこい人がいたので、ホルンちゃんも魔法でナンパした人を吹き飛ばしていました」

「おお、ちょうど目の前で吹き飛ばされた奴か。ああいうのは大会運営の邪魔だから、手加減なしでやって良いぞ」

「ありがとうございます」


 うーん、救護テントでは未だにナンパする人がいるのか。

 しかも辺境伯様の目の前でナンパをするとは、かなり度胸があるなあ。

 これからも、そういう奴は遠慮なく吹き飛ばして欲しい。

 そして夕食後は就寝ですが、ここでちょっとしたトラブルが。


「今日はシロがシルビアお姉ちゃんと寝るんだよ」

「フランがシルビアと寝るの」

「ホルンだよ」

「フィーナがシルビアお姉様と寝るのですわ」

「あわわわ、皆さん落ち着いて下さい」


 誰がシルビアさんと一緒に寝るかで、激しいバトルが生じてしまったのだ。

 これは誰が勝っても遺恨を残すな。


「シルビアさんは疲れているんだから、ゆっくり寝させてあげなさい」

「そうですよ。今日は諦めて、明日以降順番を決めてからにしましょうね」

「「「「はーい……」」」」

「ほっ、ありがとうございます」


 僕とスーが四人を諌めて、何とか落ち着きました。

 そして、シルビアさんのリュックも無事に直ったのですが、何故か可愛らしいアップリケが付いていました。

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