散歩の二百二十七話 ちょっと不審な情報

 アオの試合も終わったのでスーとホルンは救護テントへ向かい、僕達は屋台に向かいます。

 お手伝いにきている侍従に、シルビアさんを紹介しないと。


「さっきアオと試合をしたので皆さん知っているかもしれませんが、屋台を手伝ってくれる事になったシルビアさんです」

「シルビアです。宜しくお願いします」

「「「宜しくお願いします」」」


 侍従もアオとシルビアさんの試合を見ていたので、すんなりと受け入れてくれました。

 さてさて、お客が待っているから早く開店しないと。


「シルビアさんは、料理できますか?」

「はい、一通りはできます」

「では、パンが届きましたので侍従と一緒にサンドイッチ作りをお願いします」

「はい、お任せください」


 シルビアさんが料理が出来て助かった。

 試合の最中にパンが届いたので、サンドイッチ作りを頑張って貰おう。

 という事で、いざ開店です。


「お肉サンドイッチ、五個です」

「焼きそばパン、八個です」

「おにぎり十個です」

「了解!」


 もうね、開店した瞬間から待ってましたって感じでお客が押し寄せています。

 しかも、まとめ買いしているので、一回に出る量が多い。

 ここの住民は大食いばっかりなのかよ!


「お、あのスライムだな」

「本戦も頑張れよ」


 そして、昨日に引き続いてアオに声をかける人が沢山います。

 アオも律儀に、スライム焼きを創る合間に触手をフリフリしています。

 そして、もう一人。


「小さなねえちゃんも惜しかったな」

「来年勝てるようにリベンジだな」

「あ、ありがとうございます」


 シルビアさんにも声をかけるお客がいました。

 負けたとはいえアオとの戦いで善戦していたし、観客の記憶に残っている様です。

 しかし、チラチラと横目で試合を見ているけど、色んなスタイルの人が勝ち上がっています。

 何とか勝ち上がった人もいれば、余裕で勝ち上がった人もいます。

 剣士もいればシーフもいて、女性も勝ち上がっています。

 そんな中、ちょっと気になる人が勝ち上がりました。


「シュンお兄ちゃん、あの人何だか変だよ」

「そうだね。要注意だね」


 シロも勝ち上がった人に何かを感じていた。

 魔法使いタイプなんだけど、黒いフード付きのローブを羽織っていて如何にも不気味な存在です。

 不気味さだけでなく、何やら不快なオーラを感じます。

 アオも、あの人はおかしいといったリアクションです。

 そんなこんなで、予選は終了です。

 やはり、要注意人物は謎の黒いローブを羽織った男です。

 そして、お客から別の注意を聞かされました。


「ちっこいねえちゃんは、この屋台に居て正解だったな。予選で負けたヤツに、怪しいのが声をかけていたぞ」

「あっ、僕も気がついて通りすがりの兵にいいました」

「毎年あるんだよな。冒険者グループへのスカウトだったり、はたまた怪しい組織へのスカウトだったりな」


 たまたま僕も他の予選敗退した人に声をかけている怪しい人を見かけたので、巡回している兵に声をかけたんだ。

 うーん、今年は予想以上に武道大会の参加者が多いから、何か起きそうな気がするぞ。

 でも、先ずはシルビアさんにお疲れ様と言わないと。


「シルビアさん、お疲れ様です。疲れましたか?」

「シュンさん、お疲れ様です。小人族は見た目以上に体力があるからへっちゃらです」


 シルビアさんは全然大丈夫だと力こぶを見せてくれたけど、力こぶが出ていないぞ。


「それは良かったです。お金は侍従の責任者が計算してくれているので、ちょっと待っていて下さいね」

「あっ、宿は前金で払ってあるので明日とかでも大丈夫です。その代わりに、夕食用にパンを貰っても良いですか?」

「幾つでも持っていって下さい。ほぼ完売なので、あまらせるより全然良いですから」

「ありがとうございます」


 こうして予選も終わって、屋台を片付けるだけです。

 明日からどんな試合になるのかな?

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