散歩の二百二十六話 屋台の助っ人確保
僕とスーは、ステージから戻ってきたシロ達と合流します。
「シュンお兄ちゃん、アオかっこ良かったね」
「魔法一杯で凄かったよ」
「余裕だったね」
「分かったから、お前ら少し落ち着け」
シロ達は、アオが勝ったのを近くで見ていたのでとにかく大興奮しています。
と、思ったら、肝心のアオの姿が見当たりません。
ここで、アオの事を抱いたシルビアさんがこちらにやってきました。
「あの、すみません。アオさんがわざわざ回復魔法をかけてくれました」
「全然大丈夫ですよ。昨日も対戦相手を治療していましたから」
「お怪我は大丈夫ですか?」
「はい、すっかりと良くなりました」
アオはエアバレットの威力を抑えていたけど、それでも擦り傷とかを負ったはずです。
その傷もすっかり癒えている様です。
「シルビアさんは独学で魔法を学んだのですか?」
「いえ、小人族の長老が魔法を使えまして、簡単な事を教えて頂きました。しかし、魔法は根性だと言っていまして……」
「あー、確かにそんな感じの人も冒険者にいましたよ。根性でどうにかなったって言っていました」
「まさにそんな感じです」
思わずシルビアさんは遠い目をしたけど、本当に大変な思いをして魔法を覚えたんだ。
それでこれだけの風魔法が使えるのだから、本当に大したものだよ。
「シルビアさんは風魔法特化型ですか?」
「いえ、土魔法も使えます。ただ、他の魔法が使えるかは試した事がないので」
「それでも複数の魔法が使えるのは素晴らしいですよ」
スーがシルビアさんに話してくれたけど、複数の魔法が使える魔法使いは貴重です。
土魔法なら色々と応用ができるし、きっと重宝するはずです。
すると、シルビアさんが僕に話しかけてきた。
何だか、とっても申し訳なさそうな感じです。
「あの、大繁盛している屋台の店長さんですよね? お願いがあります」
「店長ではないのですが、話を聞きますよ」
「実は、今朝会場に向かっている間にスリに会いまして。その、有り金を全て取られてしまいました」
「えっ? 大丈夫ですか? 他に盗まれた物はありませんか?」
「冒険者カードを持っていたのですが、それは肌身離さず持っていたので大丈夫です。あっ、一応兵に言いました」
これは災難というか、よくその精神状態で試合に臨んだよ。
ある意味とても尊敬できます。
これだけでも、辺境伯家がシルビアさんを囲うだけの理由ができました。
「屋台で働いて、お金を得たいという事ですね」
「はい、正しくその通りになります」
「うーん、分かりました。では、念の為にそこでアイスを食べながら座っている店長を呼んできます」
「座っている?」
シルビアさんは、誰の事を言っているのか分からないのでキョトンとしていました。
スーは誰の事か直ぐに分かったので、ちょっと苦笑していました。
丁度アイスを食べきった辺境伯様の所にいって、理由を話します。
辺境伯家の運営する屋台だから、店長は辺境伯様です。
すると、辺境伯様だけでなくフィーナさんも一緒についてきました。
「路銀をすられてしまったか。兵にも不審者の捜索をもっとやらせよう。他に被害者がいるかもしれんぞ」
「そうだよね。本当に酷い人がいるもんだね」
「は、はい」
急に目の前に辺境伯様が現れて、シルビアさんはがちがちに固まってしまった。
うーん、この反応は久々にみたぞ。
「屋台の手伝いは大歓迎だ。何せ繁盛して手がまわらん」
「お金が足りなかったら、フィーナがお姉さんにお金を貸してあげるよ」
「あ、ありがとうございます」
まあ、過程はどうあれ、助っ人確保です。
丁度良いので、屋台を手伝って貰いながら色々な話を聞いてみましょう。
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