散歩の二百十五話 作業員へのまかない作り

 そして、更に辺境伯夫人様が僕に追撃をしてきた。


「せっかくだから、作業員のまかないをシュンに作って貰いましょう」

「おお、そりゃ嬉しいなあ」

「美味しい物を食べれば、午後もやる気が出てくるぞ」

「ま、マジですか」


 ざっと広場を見渡しただけで、作業員は百人以上いる。

 これだけの人数のまかないを作るんですか?

 因みに、侍従をちらっと見たら明らかにホッとしていた。

 侍従も、これだけの人数のまかないを作るのはキツかったらしい。

 と、ここでまかない作りの手助けをすると手を上げた人が。


「じゃあ、フィーナは試食をやるよ」

「シロも試食する!」

「勿論フランも試食するんだ」

「ホルンも」


 うん、君達の言いたい事は何となく分かっていた。

 パールまで、元気よく触手を上げています。

 流石に、このメンバーに調理の手伝いをしてくれとは言えないぞ。

 仕方無いので、アオに調理を手伝って貰うことに。

 焼きそばの材料が沢山あるので、まかないは焼きそば一択です。


「お手伝いします」

「野菜を切ります」

「宜しくお願いします」


 侍従も手伝ってくれる事になったので、野菜をどんどん切っていきます。

 アオも魔法を使って、どんどんと野菜や肉を切っていきます。


「おお、スライムが魔法を使っているよ」

「すげーな、魔法の制御も一流だな」


 まかないの時間になったので、続々と作業員が集まってきます。

 そして、アオが魔法を使って野菜や肉を切っているのを見て、スライムが魔法を使うのかとかなりびっくりしていた。


「アオは武道大会にも参加するんだよ」

「アオはとっても強いんだよ」

「格闘もできるの」

「そうかそうか。これだけ強いスライムは、中々お目にかからないぞ」

「もしかしたら、武道大会の注目になるかもな」


 シロ達がアオが武道大会に出ると作業員に伝えると、作業員もニヤリとしていた。

 アオも見た目は普通のスライムだから、パッと見は強いなんて思わないよね。

 こんな話を聞きながら、僕はひたすら焼きそばを焼いていきます。


「あんちゃんの作った焼きそばは旨いな」

「本当だな。これだけ旨い焼きそばは初めて食べたぞ」


 もぐもぐと焼きそばを食べている作業員の反応は上々だ。

 だが、僕は全く余裕がないのでひたすら焼きそばを焼いています。


「はい、どうぞ」

「熱いから気を付けてね」

「順番に並んでね」

「まだまだ充分にあるよ」


 フィーナさんとシロ達も、出来上がった焼きそばの配膳を手伝っています。

 お陰様で、何とか作業員全員に配膳完了です。

 僕達も、まかないを食べます。


「もぐもぐ、やっぱりシュンお兄ちゃんの作ったご飯は美味しいね」

「簡単な料理なのに、本当に美味しいです」

「「もぐもぐ」」


 フィーナさんとシロ達も、配膳が終わったので僕が作った焼きそばを食べています。

 ちょっと疲れたけど、皆が作ったものを美味しそうに食べてくれているのは気分がとても良いよね。


「治療も落ち着きました。皆さん力仕事をしているので、やはり怪我人が多いですね」

「屈強な人が多いから、少しくらいの怪我なら平気で仕事しそうだね」

「まさにその通りでした。私が治療し始めたら、作業の合間を見て沢山の人がやってきましたよ」


 スーも僕の所にやってきて、焼きそばを食べ始めました。

 治療班の方も、結構忙しかった様です。

 とはいえ、何とか落ち着きそうですね。


「シュンの料理の腕前は流石だな。アオが試合をしている最中は観戦出来る様に配慮しよう」

「それは助かります」


 辺境伯夫人様の言葉で、明日からの僕の予定が決定してしまった。

 アオの勇姿は僕だって見たいですよ。

 こうして、武道大会の本大会三日前の準備は完了です。

 いよいよ明日から予選が始まります。

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