散歩の二百六話 皆の服を作ろう

 辺境伯家で行っている勉強には、読み書き計算だけではなく礼儀作法もあります。

 今日は、スーが皆に礼儀作法を教えています。


「フィーナは良い礼儀ができていますね」

「スーお姉様、ありがとうございます」


 普段から辺境伯家で鍛えられているので、フィーナさんの礼儀作法はとても綺麗です。


「うーん、中々難しいよー」

「でも、シロちゃんもキチンと礼儀作法が出来ていますよ」


 シロもキチンとした礼儀作法を習ったのは殆どないのに、フィーナさんの礼儀作法の見様見真似で大体の形を覚えていました。

 流石に細かい所はまだまだだけど、シロの年齢を考えれば上出来じゃないかな?


「バランスが難しいよー」

「うまくできないよー」

「フランとホルンは、慌てないでいいわよ。簡単な形が出来れば良いわ」


 流石にフランとホルンは貴族式の礼儀作法に苦戦しています。

 まあ、二人ともまだ五歳だから、カーテシーの真似事が出来れば上等ですね。

 ちょっと間違っていても、よく出来ましたと誤魔化してくれそうです。


「しかし、シュンさんは本当に丁寧な礼儀をしますね。貴族との挨拶も堂々としていますし、普通にする分なら問題ないです」

「僕も色々な人の真似事をしているだけだよ。たまたま良い教科書に恵まれたからね」


 各地の辺境伯様や執事の挨拶を見ていたから、僕でも何となく挨拶は分かります。

 公式の場だとどうなるか分からないけど、そもそも僕達が公式の場に出る事はまず無いよね。

 と、ここでスーが僕達を見て一言。


「この際ですから、キチンとした貴族用の服を選びましょう。今後も貴族と接する機会がありますから」

「つまりは、中身だけでなく外見もキチンとした方が良いと?」

「流石はシュンさんですね。その通りになります」


 まあ、何となくスーの言いたい事は分かったけどね。

 そこそこの服は持っているけど、キチンとした服は持っていないよなあ。

 という事で、昼食後に北の辺境伯家御用達の服屋に行く事になりました。


「これはフィーナお嬢様ではありませんか。本日はお友達とご一緒ですか?」

「そうなのよ。あと、スーお姉様は男爵家の令嬢なの。今日は皆の服を見に来たのよ」

「畏まりました。それでは、こちらにどうぞ」

「「「「はーい」」」」


 服屋に着くと、直ぐに店主が僕達を出迎えてくれました。

 フィーナさんが店主に要件を伝えると、店主は僕達を店の奥に案内しました。


「私達の分の正装をお願いします」

「皆様の分でございますね。では、サイズを測りましょう。皆様の採寸をするように」

「「「畏まりました」」」


 スーが店主に要件を伝えると、店主は店員に僕達の採寸をするように命じました。

 メジャーっぽいもので、体の隅々までサイズを測られます。


「この際だから、正装は二着用意しましょう。フィーナにも、服を買ってあげますわ」

「スーお姉様、ありがとうございます!」


 スーの提案で、フィーナさんも服を作ることになりました。

 フィーナさんも、ニコニコ顔で店員の採寸を受けていました。

 二着だと結構な大金になるけど、幸いにして僕達はそこそこのお金があるので全く問題ありません。

 希望する服の色を伝えて、後は出来上がりを待ちます。


「二週間後に仮縫いが出来上がりますので、再度サイズを調整いたします」

「分かりました。仮縫いは、武道大会の前になりますね」

「はい、その様になります。皆様のご来店をお待ちしております」

「「「「ありがとうございました」」」」


 ちょうど武道大会の前に仮縫いができるのか。

 武道大会が始まると、アオが出場するのもあって忙しいからタイミングが良かった。

 一体どんな服ができるかな?

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