散歩の百三十一話 祝勝会

 僕とスーが席についた所で、改めて辺境伯様が僕達の前に出てきた。

 その間に、僕達の席にはワインが注がれたグラスが置かれた。


「皆のお陰で、花見祭りだけでなく司祭の企みも止める事ができた。今日は辺境伯領にとって記念すべき日になるだろう」

「「「うおー!」」」

「それでは、勝利を祝して乾杯する。乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 挨拶は短くという事で、早速乾杯の音頭が始まった。

 おー、あまりお酒は知らないけど、これはとても飲みやすいワインだ。

 さて、僕の前に座っているスーはというと、びっくりする事をしていた。


「ごくごくごく。うん、これはとても良いワインですね」

「おお、スーのねえちゃんは良い飲みっぷりだね」

「はい。私はお酒が好きなんです。すみません、お代わり下さい」

「お待ち下さいませ」


 スーはグラスに注がれたワインを一気飲みしていた。

 スーの豪快な飲みっぷりに、実行委員長の奥さんもびっくりしていた。

 早速侍従にワインのお代わりを頼む辺り、スーは本当にお酒が好きなんだろう。

 そんな事を思いながら、僕も少しずつワインを飲んでいた。


 一時間後。


「シュンさーん、ワインの減りが遅いですよー!」


 完全に酔っ払いとなったスーが、僕の肩を遠慮なくバシバシと叩いてくる。

 そしてスーは侍従に頼んだワイン瓶で、僕とスーのグラスになみなみとワインを注いできた。

 うん、どうしてこうなった?


「デュフフフ、かんぱーい!」

「か、かんぱーい」

「ゴクゴクゴク、ぷはぁー!」


 完全に壊れている笑みを浮かべながら、スーは僕に乾杯をしてきた。

 そしてスーは、なみなみと注がれているワインを水を飲むかの如く一気飲みした。

 口には出せないけど、今のスーはビールを飲み干すサラリーマンみたいだぞ。


「ははは、スーは本当に良い飲みっぷりだな」

「はあーい、皆とお酒が飲めて楽しいでーす!」


 剣士のお姉さんが、遠くの席からスーに声をかけてきた。

 そう、スーに絡まれるのを防ぐ為に多くの人が僕とスーが座っている席から離れているのだ。

 結果的に、暴走しているスーを誰も止められないどころか止めようともしていなかった。

 スーに絡まれたら乾杯の嵐になるのは、僕を見れば一目瞭然だ。

 というか、僕ももうグロッキー寸前です。

 実はスーにバレない様に、こっそりと自分に回復魔法をかけていました。

 でも、飲み過ぎて回復魔法が効かなくなってきた様です。

 そんな僕の事などお構いなしに、スーはワインを飲ませてきます。


「ほーら、シュンさんも一杯飲みましょうね」

「ごぼ、ごぼ、ごぼ!」


 そして、スーによって強引になみなみと注がれたワインを飲まされた。

 あ、もう駄目だ。


 パタン。


 とうとう、僕も限界を迎えてテーブルの上にぶっ倒れてしまった。

 流石にこれ以上は無理です。

 アルハラは駄目ですよ、本当に駄目ですよ。

 と、異世界で言っても無駄ですね。


「あれー? シュンさん、シュンさーん」


 スーが、動けなくなった僕の背中に覆い被さってきた。

 今度スーと飲む時は、僕はジュースにしよう。

 しかし、スーは本当に貧乳だなあ。

 僕の背中に、柔らかいものが少ししか当たらないぞ。

 散々スーに飲まされたからこの位は言っても良いだろうと思いながら、僕は意識を手放したのだった。

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