散歩の百二十五話 反撃開始

 僕達も目の前で起きている惨事に、思わず体がすくんで動けないでいた。

 この一人と一匹を除いて。


「とー!」


 ズドーン!


「jaaa!」


 お姉さんを食べようとしたバフォメット目掛けて、シロがアオの体当たりと共にドロップキックをブチかましたのだ。

 完全に不意をつかれたバフォメットは、防御態勢を取る暇もなく派手に吹き飛んでいた。

 

「お姉さんを食べちゃ駄目なの!」

「あっ……」


 そしてシロは、アオと共にお姉さんの前に出て蹴り飛ばしたバフォメットを睨んでいた。

 一方で、お姉さんは酷い目にあわせようとしたシロに助けられて、まだ状況を把握していないようだ。

 因みに、アオがこっそりとお姉さんに生活魔法をかけて体を綺麗にしていたが、お姉さんは自身の体が綺麗になったのにも気がついていなかった。


「戦いの邪魔だから、ならず者を拘束して教会の外に出すんだ」

「無駄な殺生はこれ以上起こさぬように」

「「「はっ」」」


 この隙に、辺境伯様と聖騎士の偉い人が配下の兵に指示を出して、戦意喪失したならず者と動かないでいるならず者の対応を始めた。

 勿論、司祭の亡骸も運んでいきます。

 お姉さんはまだ腰が抜けて動けないので、聖騎士がお姫様抱っこで運んでいった。


「シロちゃん、ごめんなさい。死なないで」

「うん!」


 お姉さんの去り際の言葉に、シロは元気よく頷いていた。


「muhuuu」


 バフォメットはシロとアオによって、教会内の座席を巻き込みながら派手に吹き飛んでいた。

 そして、怒りの表情を見せながら立ち上がってきます。

 しかし、シロの攻撃を見た他の人は、バフォメット退治にかなりやる気になってます。


「噂に聞くバフォメットとはちょっと違うな」

「恐らく召喚が中途半端だったのでしょう。知性の欠片もないし、物理攻撃も普通に通じるみたいだわ」


 ギルドマスターとギルドマスターの奥さんの見立ては、恐らく正しいのだろう。

 バフォメットが本来の力でないのなら、僕達にも倒すチャンスがありそうだ。


「へへ、ぶん殴る事ができるなら、話は早いぜ」

「全くだ。早いところ、アイツを始末しよう」


 実行委員長と辺境伯様が話をするけど、これは絶対にバフォメットを早く倒して祝杯を上げる気だな。


「hugaaa!」

「魔法を放つ気だ。魔法障壁を」


 すると、バフォメットは手に魔力を溜め始めた。

 聖騎士の偉い人の指示もあり、僕とスーに加えて魔法使いのお姉さんが魔法障壁を準備した。

 同じく魔法が使える実行委員長の娘さんにも声をかけようとしたら、何とバフォメット目掛けて魔法を放ったのだ。


「えーい」


 ズドーン。


「guga!」


 ズドドドーン!


 実行委員長の娘さんが放った魔法はバフォメットの顔を直撃し、バフォメットは魔力が十分に溜まる前に魔法を放ったのだ。

 魔力が溜まっていないとはいえかなりの威力だったが、僕とスーと魔法使いのお姉さんの魔法障壁でバフォメットの魔法を防ぐ事が出来た。


「ふふふ、やられる前にやる! 喧嘩の鉄則だよね、お父さん」

「はあ、まさかそんながさつな所が俺と似てしまうとはな」

「間違いなく、あの子はあんたの子どもだよ」


 ドヤ顔の実行委員長の娘さんに対して、両親である実行委員長と実行委員長の奥さんはかなり複雑な表情をしていた。

 とはいえ、あのバフォメットは不意打ちが効く事が分かったから攻撃しやすそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る