散歩の百十一話 子ども屋台の復活

 ちょんちょん、ちょんちょん。


 うーん、誰かが僕の頬をちょんちょんとするぞ。

 目を開けると、アオが僕の頬を突いていた。

 そっか、今日は僕の所でホルンが寝ていたんだっけ。

 僕は、ベソをかくホルンに声をかけた。


「くすん、くすん」

「ホルン、こっちにおいで」

「くすん、うん」


 僕は、寝ながら泣いているホルンを抱き寄せた。

 抱きしめながら頭を撫でてあげていると、ホルンは再び寝始めた様だ。

 こんなに小さいのに、毎日悪夢にうなされるなんて本当に可哀想だ。

 暫くは思いっきり体を動かして、ストレス発散させてやらないと。

 大人の欲は罪深いなと思いながら、僕は二度寝に入った。


「「「おはよーございます」」」

「おお、おはよう」


 早朝練習も終わり冒険者ギルドで手続きを終えた僕達は、早速花見会場に到着。

 実行委員長に挨拶をしつつ、僕はとある質問をした。

 何故か、屋台が三つに増えているのだ。


「実行委員長、何で屋台が三つに増えてるんですか?」

「そりゃ、子ども屋台を復活させたからだ。この屋台で焼きそばパンを販売するぞ」


 子ども屋台って、昨日先代様が話をしていたものじゃないですか。

 早速動いたって訳ですか。

 という事は、この子ども屋台を担当するのは、もしかして……


「「「おはよーございます」」」

「おお、来たか。今日は宜しくな」


 やっぱりというか、やってきたのは辺境伯家で保護されている子ども達だった。

 しかも、何人かは冒険者カードを手に持っているぞ。


「子ども達もやる気になっていてね。辛い事があったから、楽しい体験をして貰おうと思ってね」

「そうですか。確かに、どの子どもも笑顔ですね」

「ええ。子どもは、やっぱり笑顔の方が良いですわ」


 子ども達の付き添いで来ていた先代奥様も、子ども達の笑顔に目を細めている。

 子ども達は早速お揃いの法被を着て、先代奥様と同じく付き添いで来ていた侍従が服の調整を行なっていた。

 

 さて、僕はカレーの仕込みをしているが今日は作業分担をする事になった。

 僕とアオとリーフと手伝いのおばちゃん達で料理を作って、子ども達とこれまたお手伝いのおばちゃん達で商品を販売する事になった。

 というか、手伝いのおばちゃんも新たに雇うとは、屋台が物凄く儲けている証拠だ。

 そんな事を思いながら、僕は仕込みをしていく。

 大量にカレーを作ったし、きっと品切れになる事はない、はず。


「お前は本当に不器用だな。パンに焼きそばを挟むだけなのに、何でボロボロとこぼしているんだよ」

「僕の方が綺麗にできるよ!」

「私もできる!」

「うう、どうせ私はガサツな女なのよ……」


 焼きそばパンを作るのは簡単なのに、実行委員長の娘さんがズタボロな焼きそばパンを作っていた。

 比較的年齢が高い子ども達の方が、実行委員長の娘さんよりも綺麗に焼きそばパンを作っていた。

 実行委員長も、自分の娘の家事の出来なさを嘆いていた。

 そんなこんなで、準備は進んでいきます。

 そして、いよいよ開店です。

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