散歩の百十話 まさかの焼きそばパン販売決定

 前日に続いて、夕方前にはまたもや在庫切れで屋台は閉店となった。

 とんでもない売上になっているだろうが、今の僕にはそんな余裕はない。


「疲れた……」


 昨日に引き続き、僕とアオとリーフは疲労困憊だ。

 椅子に座りながら、ぐったりとしてしまった。

 下手な戦闘訓練よりも、一日中料理を作る方が大量を使いそうだ。


「いやあ、良い魔法の訓練になったな」

「うむ。教会で治療を受けられない人も訪れているのだろう」

「元気になる事は、良い事ですね」


 治療班の方も、今日は大忙しだったみたいだ。

 どうも腕の良い治癒師がいると街の話題になった様で、花見客以外の怪我人や病人も多かったという。

 教会の惨状は皆知っているので、この位折り込み済みだと全く平気だった。

 

「楽しかったねー」

「ねー」


 結局、辺境伯家に保護されている子ども達も最後までお手伝いをしていた。

 だいぶ楽しかった様で、皆ニコニコとしていた。

 楽しんでもらえたなら何よりだ。

 何だか実行委員長と先代様と先代奥様が話をしているけど、あえて聞かない様にしておこう。


「後は、残ったコッペパンの対応だな」


 カレーの付け合わせでご飯を選ぶ人が殆どだったので、コッペパンが大量に余ったのだ。

 どうしようかなと思ったけど、良いアイデアがあった。


「すみません、焼きそばっていつから再開しますか?」

「明日からだよ。それがどうしたんだい?」


 実行委員長の奥さんに焼きそばの再開時期を聞いてみたけど、ちょうどタイミングが良かった。


「マーガリンかバターってありますか?」

「バターならあるよ」

「せっかくなので、焼きそばパンを作ろうかなと思います」

「焼きそばパン?」


 実行委員長の奥さんがはてなって顔をしているので、焼きそばパンについて簡単に説明しよう。


「コッペパンに切り込みを入れて、切り込みにバターを塗ります。そこに濃い目に味付けした焼きそばを挟みます。惣菜パンの一種ですね」

「なるほど。これなら焼きそば用の容器もいらないし、余ったコッペパンも利用できる。このコッペパンも、明日までは余裕で持つだろうな。ちょっと待ってな」


 実行委員長の奥さんは、先代様と先代奥様と実行委員長の所に向かっていった。

 絶対に焼きそばパンを売り出す件の話だろうな。

 四人とも、僕の方をチラチラと見ながら話をしている。

 ここはさっさと退却するに限るぞ。


「では、また明日朝来ますので」

「おお、頼むぞ」

「「「ばいばーい!」」」

「失礼します」


 僕達は実行委員長に挨拶をしてから、女性冒険者と獣人のグループと共に冒険者ギルドに寄ってから宿に帰った。

 明日も朝から絶対に忙しくなりそうだぞ。

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