散歩の百五話 屋台の前に大行列
そして、花見祭りが始まって二時間がたった。
「スライム焼きおいしいよ!」
「焼きそばも美味しいよ!」
お揃いの法被を着たフランとホルンが、スライム焼きの屋台の中から声をかけていた。
そして、スライム焼きと焼きそばの屋台の前には長蛇の列が出来ている。
どうしてこうなった……
スライム焼きの屋台では、アオとリーフが一生懸命にスライム焼きを作っている。
そして、僕も焼きそばをフル回転で作っていた。
「はい、おつりです。熱いので、気をつけて下さいね」
「まいどあり」
会計をやる暇すら無くなってしまったので、スーと魔法使いのお姉さんが手伝ってくれている。
「いやあ、まさかこんな行列が出来るとは思わなかったぞ。スライム焼きは珍しさからで、焼きそばはソースの焦げる匂いだろうな」
実行委員長もびっくりする程の行列だけど、確かに匂いと珍しさから並んでいる人が多いのだろう。
「ハハハ、初日は人が多いからな。昼前になったら、もっと人が増えるぞ」
「えー!」
笑いながら実行委員長が話してくるが、僕とアオとリーフはびっくりしてしまった。
これ以上の人が、これから集まってくるのか。
そして僕とアオとリーフは、お昼過ぎまでひたすら屋台で調理を続けていたのだった。
「疲れた……」
「ハハハ、まさかネタ切れになるとはな。入荷するまで時間があるから、少し休んでな」
お昼過ぎになって麺やタネの素が切れてしまったので、僕とアオとリーフはようやく屋台から解放された。
僕は焼きそばを食べながら、アオとリーフと共にテーブルに突っ伏しています。
まさか自分に回復魔法をかける事になるとは思いませんでした。
アオも、自分とリーフに回復魔法をかけています。
「楽しかったね」
「ねー」
フランとホルンは声かけが楽しかったのか、満足気にジュースを飲んでいた。
特に僕はホルンの事を気にしてみていたが、周りに褒められるのが嬉しいのか二人ともとても良い笑顔だった。
もしかしたら、屋台の経験が良い方向に向かうのかもしれないぞ。
そして、仮小屋では今朝採用された警備役の冒険者が焼きそばを食べていた。
「美味いな。ただの焼きそばなのに、めちゃくちゃ美味いな」
「そういえば、屋台に並んでいた人の行列は半端なかったな」
「流石は辺境伯家の料理人に料理を教えた人だ」
マテ。
冒険者が、何か言わなかったか?
何で、昨日辺境伯家で料理人に料理を教えたのを知っているんだ?
「ふははは、商人の耳を舐めるなよ。あんちゃんが、辺境伯家や宿でカレーなる料理を作ったのは知っているぞ」
「あんたが犯人ですか!」
「辺境伯家の料理人に料理を教えた凄腕が賄いを作ると依頼書に書いたぞ」
実行委員長、いくら何でもやりすぎです。
治療師として花見会場に入ったのに、すっかり料理人じゃないですか。
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