散歩の百三話 ホルンが新たな仲間に

「わー! とっても綺麗!」

「お花がいっぱい!」


 花見会場に着くと、この前来た時には咲いていなかったサクラが沢山咲いていた。

 サクラが咲き誇るとても綺麗な光景に、シロとフランも目を輝かせています。

 スーも他の人も、目の前の綺麗な光景に目を奪われています。

 そしてサクラを眺めながら、僕達の待機する施設に到着。

 既に気の早い街の人は、思い思いにサクラの花見を始めています。


「おや? シュンお兄ちゃん、見た事がある馬車が止まっているよ」

「そうだね。あの馬車は、昨日僕達が辺境伯様の屋敷に行った時に乗ったものだね」

「辺境伯家で何かあったのでしょうか?」


 仮小屋の側に、この場所には似合わない豪華な馬車が止まっていた。

 辺境伯家で何かあったのかと思いつつ、仮小屋の中に入ろうと思った瞬間だった。


「お姉ちゃん!」

「え?」


 突然仮小屋から小さな女の子が飛び出してきて、シロに勢いよく抱きついてきた。

 シロに抱きついている小さな女の子を見たら、昨日ムホウ商会で男から暴行を受けた天使の少女じゃないか?


「うーん、やっぱりシロちゃんの側にいた方が良さそうね」

「先代奥様、これはどうしたのですか?」

「ここでは何ですから、中に入りましょう」


 天使の少女に続いて仮小屋から出てきたのは、先代奥様だった。

 どうもこの天使の少女の件で、僕達に話があるそうだ。

 とりあえず仮小屋の中に入ろう。


「お、昨日はご苦労だったな。今日からまた宜しくな」

「はい、よろしくお願いします」


 仮小屋の中には既に花見祭りの実行委員が集まっていて、昨日教会や奴隷市場にも同行してくれた実行委員長が挨拶をしてくれた。

 祭りの準備もあるだろうけど、先代奥様はこの後の用事もあるので先に話を聞いておこう。


「昨日ムホウ商会で暴行を受けている所を見ましたけど、どうもムホウ商会に入れられてから周りの子どもへの見せしめの為に毎日暴行を受けていたらしいのよ」

「「「え!」」」

「しかも、どうやら目の前で両親を殺害されて誘拐されたみたいなの。昨晩も不安になっちゃって何度も起きてね。助けてもらったお姉ちゃんの所に行きたいって言ったので、この子の為になるかなと連れてきたのよ」

「確かに僕の鑑定でも孤児と出ております。因みにフランも孤児ですね」


 先代奥様の話した内容は、かなりの衝撃だった。

 天使の少女が昨日受けていた暴行でもかなりの物だったのに、毎日暴行されていたとは。

 更には目の前で両親を殺害されるなんて。

 僕は鑑定の結果を知って、更に落ち込んでしまった。

 余りの話の衝撃度に、全員が黙ってしまった。


「勿論、息子から王城へ連絡を入れたわ。王城でもこの事を聞いて、かなり憤慨しているそうよ」

「そりゃそうだろう。昨日俺が見た光景だってかなりの衝撃だったんだ」

「こんな小さな子が酷い目にあっていたなんて。許せませんね」


 そして全員がムホウ商会への怒りを募らせていた。

 暴行した男は捕まったけど、天使の少女の心の傷は中々治らないだろう。

 そんな大人の話を他所に、子ども達は別の話をしていた。


「ねえ、なんて名前なの?」

「ホルン」

「ホルンだね!」


 シロが天使の少女に名前を聞いていたが、可愛らしい名前だ。

 因みにフランは、皆の事を呼び捨てで呼んでいます。


「ホルンちゃん、シロと一緒にいる?」

「良いの?」

「フランも一緒だよ」

「うん。ホルン、シロお姉ちゃんといたいよ」


 そして子ども達の中で、ホルンを新たな仲間として歓迎するのが決定した様だ。

 この雰囲気でダメとは言い難いぞ。


「先代奥様、子ども達もこう言っていますので。ホルンもうちで面倒を見ます」

「本当に申し訳ないわね。宿にあの子の服などを届けさせますから」


 こうして、新たな旅のメンバーが追加される事になった。

 まあ、こればっかりはしょうがないよね。

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