散歩の九十八話 子ども達を保護する事に

 騒いでいた教会関係者も兵によってドナドナされた所で、複数の馬車がこちらにやってきた。

 子ども達を乗せる為に、辺境伯家で用意された馬車だ。

 

「はい、この馬車に一緒に乗りましょうね」


 先代奥様が、侍従と共に子ども達を馬車に乗せていく。

 馬車は大きいので、子どもがいっぺんに乗る事ができる。

 子ども達はおっかなびっくりだったけど、素直に馬車に乗っていった。

 

「じゃあ、あたしらは一旦店に戻るよ」

「宿には遅くなるかもって伝えておくよ」

「辺境伯様の所に泊まる可能性も伝えておきますね」

「すみません、よろしくお願いします」


 女性冒険者と商店街の店主達は流石に長時間店を空けられないので、各自店に戻って行った。

 女性冒険者は宿にも連絡してくれるそうなので、ここはお願いする事にした。

 因みに実行委員長も店に戻ったので、辺境伯様との話し合いは僕とスーで行う事になった。


「うぅ」

「ずっとぎゅっとしているね」

「仕方ないよ。今まで他の子どもからも隔離されていたのだから、この子は寂しかったのだろうね」


 というのも、シロが助けたドラゴニュートの小さな女の子が、シロに抱きついて離れなかったのだ。

 まあ教会の件もあるし、僕とスーで話をするのがベターかな。

 という事で、僕達は先代様と先代奥様が乗る馬車に同乗させて貰った。


「こんな小さい子が隔離されていたなんて、不憫でならないわ」

「ドラゴニュートは特に希少種だからな。奴らにとっては、それだけ貴重な商品だったのだろう」


 シロの隣には先代奥様が座っていて、時折シロに抱きついているドラゴニュートの少女の頭を撫でていた。

 先代も、ドラゴニュートの少女を見ながら何やら考え込んでいる様子だった。

 子どもを商品として扱うムホウ商会に対して、思う事があるのだろう。

 僕もスーも、今回の件は憤りしかなかった。

 もし、天使の少女が暴行を受けている現場に遭遇しなければ、この卑劣な犯罪を見過ごした可能性もある。

 

「すぅ、すぅ」

「寝ちゃったね」

「そうだね。きっとちゃんと寝られなかったのかもしれないね」


 馬車が屋敷に近付いた時には、ドラゴニュートの少女はシロに抱きついたまま寝ていた。

 精神的な疲れもあるだろうと、このまま寝かせる事にした。

 そして、馬車は屋敷に到着。

 子ども達は順次屋敷の中に運ばれていき、大きな部屋に集められた。

 シロもドラゴニュートの少女を抱いたまま、大きな部屋の中に入っていく。

 ここで簡単に名前とかを聞いて、名簿を作る様だ。

 侍従が忙しく動き回りながら、子ども達から話を聞いていた。

 ドラゴニュートの少女の事はシロに任せて、僕とスーとアオは応接室に向かった。

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