散歩の九十六話 援軍の到着

 奴隷市場に新たにやってきたのは、辺境伯様だった。

 辺境伯様は鎧を着込んだ完全装備で、子ども達の側まで歩いてきた。


「母上、そしてシュンよ。この度の事は誠に申し訳ない。まさかこんな事態になっているとは思わなかった」

「たまたま私達の側で蛮行が行われたので、この子達を救う事が出来たのです。今は、この事態を収める事に集中しましょう」

「子ども達の事は任せて下さい。屋敷の方はお任せ致します」


 辺境伯様は、先代奥様と僕に対して深々と頭を下げていた。

 そして何人かの子どもの頭を撫でた後、辺境伯様は先代様の所に走って行った。


「父上、遅くなり申し訳ありません」

「いやいや、ご苦労じゃ。屋敷で子どもを受け入れる準備は進めておるか?」

「はい。広めの客室を準備しており、担当の侍従も決定しております。また、直ぐに温かい食事が食べられる様にしております」

「うむ、それで良い。この子達は酷い扱いを受けておった。我々が子ども達の代わりに、酷い行いをした大人を成敗しないとならんのう」

「そうですね。私もハラワタが煮えくりかえる思いでおります」


 流石は辺境伯様だ。

 既に保護した子ども達の、この後の事の手を打っているとは。

 そして先代様も、あくまでも子ども達の為に対応しているというスタンスを崩していなかった。


「辺境伯様、先代様。商会のトップを捕縛しました」

「ぐっ」


 そして、複数の兵に囲まれながら太った男性が連れられてきた。

 この商会のトップは悪い事を行った認識があるのか、辺境伯様と先代様から顔を逸らしていた。

 そんな商会のトップの態度を無視して、辺境伯様が叫ぶように話した。


「ムホウ商会、奴隷商会の設立申請を却下したのにこのザマは何だ!」


 うおい、この商会が問題のムホウ商会ですか!

 しかも、奴隷商会を無許可営業していたのかよ。

 これじゃあ、この商会の関係者は断罪されても何も言えないぞ。

 正に商会の名前通り、無法状態でやりたい放題だ。


「無許可での奴隷売買は、死刑もあり得る重罪だ。しかも、この子ども達は違法に捕えられた可能性が高いぞ」

「く、くそ」

「関係者を厳しく取り調べるのだ」

「「「はっ」」」


 次々と関係者が馬車に乗せられて連行されていく。

 この世界の取り調べは、前世の様なものではない。

 きっと、拷問も含まれた取り調べになるだろう。

 兵も今回の事にかなり憤慨していて、かなり気合を入れて関係者を連行して行った。

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