散歩の八十一話 思わぬ再会その二
「お待たせしました。領主様がお見えになります」
お茶のお代わりを入れてくれた狐獣人の侍従が、もうそろそろ辺境伯様がやってくると言ってきた。
どんな人が入ってくるのか緊張して待っていたら、部屋がノックされて僕達が立ち上がると二人の男性が入ってきた。
一人は若い男性で、もう一人は僕達が見知った人たちだった。
「あー、おじいちゃんだ!」
「ははは、久しぶりじゃな」
そう、東の辺境伯領にいく為にギルドマスターと共に馬車に乗っていたご老人だった。
しかし、シロにアオよ。
いくらびっくりしたとはいえ、人の事を指さしてはいけません。
「道中父上が大変お世話になったようで。先ずは座って下さい」
若い男性が僕達に着座を促したけど、よく見ればご老人とこの男性はよく似ているなあ。
髪色や顔つきが一緒だ。
とりあえず、僕達は着座した。
「私は初めましてになりますね。当代のイーストランド辺境伯となります。隣におりますが、先代の父上となります」
「ほほほ、久々じゃのう。しかし、儂は直ぐに会うと言ったじゃろうが」
「もしかして、先代様とギルドマスターはグルでした?」
「ははは、まあな。事前にお前らが東の辺境伯領に来るのは知っていたが、まさか馬車で一緒になるとは思わなかったさ」
どうも馬車で一緒になった時から、僕達の事は知っていたという。
知っていて、あえて知らないふりをしていたとは。
「辺境伯様、こちら南の辺境伯様からのお手紙になります」
「ありがとう。確認させて貰うね」
僕はギルドマスターと先代様と話を続けていたが、スーは淡々と東の辺境伯様に手紙を渡していた。
ごめん、僕はもう少し絡まれそうだ。
「ふむ、南の辺境伯領でもレッドスコーピオンが出たというが、ここまで大事だったとはな」
「はい、下手をすれば街に大きな被害が出る所でした」
辺境伯様が手紙を読み終えたタイミングで、僕はようやくギルドマスターと先代様から解放された。
まあ、真面目な話をするってのもあるけどね。
「来たばっかりの君達も感じたと思うけど、この領は宗教問題を抱えている」
「はい、しかも宗教関係者を見ましたが、悪人の反応がありました」
「ふう、そこまで分かっているとはね。しかし、こちらも中々に手出しが出来ない状況でね」
ギルドでいちゃもんをつけてきた宗教関係者は、まるでマフィアみたいな言いがかりをつけていた。
気配も敵の反応が出ていたし、少なくともまともな人物ではないと僕は受け取れた。
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