散歩の六十四話 東の辺境伯領へ出発

 そして、東の辺境伯に向かう当日の朝。

 僕達は借りていた宿の部屋を生活魔法で綺麗にしておいた。

 南の辺境伯領に戻ってきてももうこの宿に泊まることはできないから、何だか感慨深い物があるなあ。


 部屋を出ると、同じく宿を出るメンバーと鉢合わせになった。

 皆もこの宿を卒業するので、同じく感慨深い物があるようだ。


「おう、出発するか?」

「はい、色々とお世話になりました」

「「「ありがとうございます!」」」

「うん、元気でな!」


 店主に見送られて、宿を後にした。

 良い人に出会ったと、本当にそう思ったのだった。


 その後は皆でギルドに行って、出発のご挨拶。


「賑やかなのがいなくなると、少し寂しいな」

「でも、またここにやってきたいと思っていますので、その時は宜しくお願いします」

「ああ、待っているよ。そうだ、東の辺境伯領のギルドマスターへ手紙を書いた。着いたら、渡してくれ」

「確かにお預かりしました。それでは、色々とお世話になりました」

「「お世話になりました」」

「ああ、元気でな」


 受付にいたギルドマスターから手紙を預かり、僕達は挨拶をしてギルドを出発する。

 

「また、パーティ組もうな」

「今度会った時は、お互いにランクを上げていたいな」

「気をつけて行けよ」

「皆さんもお元気で。色々とお世話になりました」

「またな」


 宿で一緒だったメンバーともここでお別れ。

 さようならじゃなくて、またなって言ってくれたのがとても有り難いなあ。


「おう、今日出発なんだってな」

「気をつけてね」

「餞別だ。道中で、食ってくれ」

「ありがとー!」


 市場もよく利用したので、僕達に声をかけてくれた。

 中には餞別をくれた人もいたので、シロとアオが元気よく手を振っていた。

 この街の人は本当に良い人ばかりで、過ごしやすかったなあ。


 そして、僕達は馬車乗り場に到着。

 すると、いつも薬草採取で一緒だったおばさんに男の子と女の子が待っていてくれた。


「すみません、見送りに来て頂いて」

「良いんだよ、子どもが変な気を使わないの。あたし達も助かったのだからね」

「今度来るときには、初心者を卒業しているよ」

「楽しみにしていてね」

「うん、シロ楽しみにしているよ!」


 おばさん達と言葉を交わし、東の辺境伯領行きの馬車に乗り込む。

 ここからは、何回か馬車を乗り継いでいくそうだ。


「バイバーイ、またね!」

「「またね!」」

「気をつけて行きなね!」


 馬車が出発すると、シロとアオと共に僕とスーも振り返って三人の姿が見えなくなるまで手を振っていた。

 さあ、東の辺境伯領に向けて出発だ!

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