散歩の六十三話 初心者卒業
「はい、お疲れ様です。依頼終了ですね」
「ありがとうございます」
「これで皆さんはFからEランク冒険者にランクアップしました」
「やったー!」
東の辺境伯領に明日向かうのだが、今日も普通に依頼を受けていた。
そして初心者卒業と言われるEランクに冒険者ランクが上がったのだ。
シロとアオはランクが上がったのが嬉しくて、くるくると回っていた。
「数年ぶりに現れた、依頼失敗ゼロでのEランクへの昇格となります。依頼失敗が少ないと、昇格に良い影響があるんですよ」
「そんな事があるんですね」
「それにシュンさん達は、採取に討伐に街からの依頼とバランス良く依頼を受けてくれています。特化した依頼だけを受けるより評価は高くなりますよ」
「え? 難しい依頼専門の冒険者もいると聞いたことがありますよ」
「特化型の冒険者は、殆どが高ランク冒険者です。初心者のうちは、バランスよく依頼を受けて経験を積んだ方が良いでしょう」
確かに専門的な事を行うにしても、基礎が出来ていないといけないだろうな。
討伐ばっかりやっている冒険者もいたけど他の指名依頼で失敗していたし、バランスは大事なのかもしれないな。
「因みに他の街で依頼をこなす時に、何か手続きはいりますか?」
「その街のギルドにて到着の手続きを行えば問題ありません。Eランクになりましたので、手続き料も無料となります」
他の街で冒険者活動をするのも、特に難しい事はなさそうだ。
特に手続き料が無料ってのはありがたいな。
実は全員がランクあがったことにより、宿の方でも動きがあった。
「お、初心者卒業したか。なら、この宿からも卒業だな」
「「「そうだった……」」」
僕も完全に忘れていた。
この宿は、初心者の時だけ利用できるんだった。
宿のメンバーもすっかり忘れていて、どうしようかと頭を悩ませていた。
「なに、中級者用の宿もある。金が貯れば、一軒家を借りる事もできる。先ずは中級者用の宿に移るのが良いだろう」
「「「ありがとうございます」」」
中級者用の宿を紹介してくれる事になり、皆ホッとしていた。
僕達も、他の街で宿を借りる時は気をつけよう。
「しかし、三ヶ月もかからずに全員初心者卒業か。久々に優秀な冒険者を見たよ」
「正直、俺らは普通ですよ。シュン達が凄すぎるんですよ」
「運も実力の内だ。それにシュンが嫌がっていたら、お前らとパーティを組むことはなかっただろう。その時点でお前らは合格だったんだぞ」
確かに店主の言うとおりだった。
僕に限らず、シロやスーが嫌がっていたらパーティを組むことはなかった。
逆に僕も色々と教えて貰ったし、僕達の方こそ助かった部分もあった。
きっと僕達も、運が良かったのかもしれないな。
その日の夜はお祝いという事で、少し豪勢な料理が出てきた。
「うーん、今日の料理も美味しいよ!」
連日のごちそうに、シロとアオはご機嫌な表情で料理を食べている。
スーもニコニコと他のメンバーと話をしている。
最初にスーと会った頃よりも、だいぶ社交的になったなあ。
「シュンよ。この後は前に聞いた通りか?」
「はい、各地の辺境伯領を回った後に王都へ向かいます」
「よし、それなら俺らも来年の新年は王都で迎えられるように頑張ろう」
「いいな、王都で年越しと新年なんて。お貴族様になった気分だ」
「シュンなら本当に貴族になってもおかしくはないないな」
「違いない。というか、スーもいるし本当に貴族屋敷で新年を迎えたりして」
皆で色々な話をした。
今までの事、そして未来の事。
年末に王都で会おうという事になって、何をしようかと皆で妄想にふけるのだった。
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