散歩の三十八話 意外な人との再会

 僕達は、家宰さんと共に辺境伯様の屋敷に向かう。


「何か良くないことが起きてなければ良いですが」

「僕は既に何か起きていると思っていますよ」


 道中スーも不安に感じて僕に話しかけて来たけど、僕は何かがあると確信している。

 大事故の後だけあって、シロもアオも言葉少なめで妙に大人しかった。

 流石に即死だと治療出来ないし、即死者がが出てもおかしくない状況でもあった。

 

「はあ。あまり嫌な事は考えたくないのですけど、僕はあの貴族が事件に絡んでいると思っています」

「私もそう思っています。あまりにも色々な事が起きるタイミングが良すぎです」


 屋敷について先日と同じ応接室に案内されると、出された紅茶を飲みながら僕とスーが話をしていた。

 その時、シロが僕におずおずと話しかけてきた。


「シュンお兄ちゃん。気のせいかもしれないけど、馬車が倒れた所にいたら、遠い所から誰かがこちらを見ていたかもしれないの」

「シロとアオがそう感じたのなら、誰かが監視をしていた可能性があるね」

「そうそう、少しでもおかしいと違和感を感じる事は大切よ」

「「「あっ!」」」


 皆とそんな事を話していたら、意外な人物が入ってきた。


「「「ギルドマスター!」」」

「この格好で会うのは初めてね」


 応接室に辺境伯様と守備隊長と思われる人と共に、貴族令嬢の格好をしたギルドマスターも入ってきた。

 予想外の姿に、皆びっくりしてしまった。

 ギルドマスターはというと、イタズラが成功したとニヤリとしていた。


「はあ、君達にも伝えていなかったのか。アリサは私の正妻であると共に、この領のギルドマスターでもあるのだ」

「改めて宜しくね」

「アリサは伯爵家の出身で、しかも冒険者をはじめたのは結婚してからだ。子育てや仕事の合間でやっていたらいつの間にかAランクになっていたんだよ」

「「「えー!」」」


 辺境伯様が苦笑しながら教えてくれて、ギルドマスターがお茶目にウインクしてくる。

 子育てや仕事の合間にやっていてAランク冒険者になるって、とんでもない才能だぞ。

 僕達はかなりびっくりしてしまったけど、スーの事も色々と知っているし、腑に落ちる所もある。

 改めて皆座って、話が始まった。

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