散歩の三十七話 馬車事故の原因と裏にあるもの
「済まない、到着するのが遅くなった。怪我人はどうなった?」
事故から大体十分くらいたって、街の兵が事故現場にやってきた。
何だか少し焦っている様な気もする。
もしかして、他でも何かあったのかな?
「怪我人の治療は済んでいます。事故当時は重傷でしたが、全員無事に回復しています」
「そうか、それは良かった。協力感謝する」
先ずはじめに全員無事である事を伝えると、駆けつけた兵はホッと胸を撫で下ろしていた。
どうやって事故の説明をしようかと思っていたら、シロとアオが馬車をのぞき込んでいる。
何かを見つけた様だ。
「シュンお兄ちゃん、これ見て!」
「これは、まさか誰がやったのか?」
シロとアオが指さした方に、僕とスーと兵が向かった。
そこは馬車の車軸の所なのだが、破談面が明らかにおかしい。
「人為的に傷つけた跡がありますね」
「そうか。だとすると、さっきの騒ぎもわざとだったのか」
兵が唇をかみしめている。
騒ぎって何だろう。
「ここに来る前に、同時に三箇所で乱闘騒ぎがあったんだ。もしかしたら、駆けつけるのが遅くなって死者が出るのを狙っていたのかも」
「しかし、誰がこんな事を仕組んだのだろうか?」
「それを調べなければならない。後は、街中の馬車の点検を行わないとならないぞ」
僕と話をしていた兵は、別の兵に馬車の点検を指示していた。
他にも同じ事が起こらない様にしないといけない。
そして何となくこんな事をする可能性のある貴族がいるが、確証が得られないので追求のしようもない。
と、ここで新たな援軍がやってきた。
「たまたまシュン様がいらしたとは。まさに不幸中の幸いですな」
「あ、家宰さん。家宰さんも現場に来たんですね」
「はい、緊急事態ですので。一歩間違えれば、商店や住宅に突っ込んで大事故になりました」
流石に大きな事故だったので、辺境伯様の屋敷から家宰さんがやってきた。
そういえば、今回は単独事故で済んだけど、一歩間違えれば周りの住宅に突っ込んでいたかもしれない。
そんな事を思っていたら、家宰さんが僕と兵に向かって話を始めた。
「シュン様、お手数ですがこのあと領主様がお話があるとの事です。ご同行いただけますか?」
「はい。僕も確認したい事があります」
「お手数をおかけします。守備隊長にも、屋敷にくるように伝えて貰えますか?」
「仔細承りました」
やはりというか、何かのトラブルが既に起きていたんだ。
僕達も絡むという事は、あの貴族絡みで間違いなさそうだ。
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