散歩の三十六話 大事故発生
「早く怪我人を運び出せ!」
「くそ、馬車が動かないぞ」
「誰か、誰か治癒師はいませんか?」
教会から出ると、そこは地獄絵図だった。
バスみたいな役割を果たしている馬車の定期便の車軸が折れていて、お客を載せた状態で馬車がひっくり返った様だ。
馬車から投げ出された人もいれば、ひっくり返った馬車に足を挟まれて動けない人もいる。
「なんて酷い事でしょうか」
「シュンお兄ちゃん、大変だよ!」
「直ぐに助けないと。皆も手を貸して」
「「うん!」」
余りの惨状にびっくりしてしまったけど、気合を入れ直して直ぐに現場に駆けつける。
「僕達も手伝います。治癒魔法が使えます」
「助かる。直ぐに手当をしてくれ」
「はい!」
救出活動をしている人に声をかけて、僕達も早速治療を始める。
怪我人は全部で八人。
内、一人はまだ馬車の下敷きになっている。
簡単に様子を見たけど、他の七人も手や足を骨折しているぞ。
「スーとアオも、先ずは生活魔法で体を綺麗にしてから回復魔法をかけて」
「はい、やってみます」
土の地面に投げ飛ばされたので、全員かなり汚れている。
衛生的にも良くないので、先ずは体を綺麗にしてから回復魔法をかける様にした。
「おお、凄い。痛みが取れたぞ」
「どうですか? 他にも痛い所はありますか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう!」
こうして一人ずつ治療を行っていく。
スーもアオも、順調に治療が進んでいるようだ。
「このスライムは凄いな。こんなにも魔法が使えるなんて」
見た目は普通のスライムのアオが骨折を治療するのだから、治療を受けていた人はかなりびっくりしていた。
「はい、これで良くなったと思いますよ」
「うわあ、何ともないよ。ありがとう、お姉ちゃん!」
「うふふ、どういたしまして」
そして、スーの潜在能力が凄いのか、スーの回復魔法が凄まじい。
スーは聖魔法の特化型だと思うけど、これ程までとは思わなかったぞ。
「うりゃー! 全力シロパワー!」
「馬車が持ち上がったぞ。急いで引っ張れ!」
何という身体強化なんだろうか。
シロが一人で馬車を持ち上げてしまったぞ。
馬車の近くにいた人はそれどころではなかったが、小さな猫耳少女が馬車を持ち上げると周りにいた人は目玉が飛び出そうになるほどびっくりしていた。
「スー、治療を頼む」
「はい、任せて下さい」
運ばれてきた人の体を生活魔法で綺麗にして、スーが直ぐに治療する。
もしかしたら足を切断しないといけないかと一瞬思ったが、何とか無事に治療できた様だ。
アオはというと馬の治療をしていて、こちらも何とかなったみたいだ。
「ふう、何とか全員助かって良かったですね」
「そうだね。でも、何で馬車が壊れたのだろうか?」
周りの人も全員助かった事にホッとしつつ、何故馬車が壊れてこの様な大惨事になったのか不思議でならなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます