散歩の三十一話 領主邸へご招待

「すまんね、事態が事態なだけに親方が行っちまって」

「いえ、こればかりは仕方ないですよ」

「可能なら、隣の倉庫も頼めるか? 元々親方も追加で依頼する予定だったらしいし」

「分かりました。お昼休憩をしたら取り掛かります」


 このあとどうしようと思っていたら、追加で倉庫清掃を受けた。

 やることは同じだし皆の了解も得たので、お昼ごはんを食べて作業開始。

 なのだが、スーとアオは別の作業に借り出された。


「これも違うかもしれません」

「そうだな。これは俺にも分かるぞ」


 先程の荷物の中から、アオが怪しい物を仕分けしてスーとチェックする人とで確認していた。

 作業しながらたまに横目でチラチラ見るけど、届いた荷物は正規品が三割程度で他は偽造品の様だ。

 スーはともかくとして、アオも紅茶の良し悪しが分かるのか。

 僕が鑑定を使えるのは秘密だし、ここはお任せしておこう。


「これはこれは、とんでもない量の偽物だな……」

「中々の量で、驚きが大きいです」


 僕達が午後の清掃を開始して一時間たった時、倉庫主が辺境伯邸から戻ってきた。

 執事と思わしき人も一緒に連れてきていて、スーとアオが仕分けた偽物の数に驚いていた。


「本物とは、匂いも茶葉の色も違いますね。一目瞭然ですな」

「本物と偽物を混ぜていたようですが、偽物の割合の方が大きいです」


 執事と思われる人も、ひと目で分かる偽造に溜め息をついていた。

 その時、倉庫主は僕の事を手招きして呼び寄せた。

 一体なんだろう?


「家宰様、こちらにいる冒険者がうちの者と共に不正を見抜きました」

「まだ若手ではないのか?」

「はい、全員冒険者登録をしたばかりということです」

「ほう、それは素晴らしいな」


 えーっと、倉庫主は僕の事を皆のリーダーっぽく紹介している。

 他の人に視線を向けると、面倒くさい事は任せたと視線で返してきた。


「そういえば、商業ギルドから新人冒険者が沢山の薬草を採っていたと報告があったが、そちらにも関与しているのかな?」

「はい。昨日初めて薬草採取の講習を受けまして、その際に沢山の薬草を採ることが出来ました」

「成程、新人なのに中々優秀なグループの様だ。礼儀もしっかりとしている」

「有難う御座います」


 スーツをビシッときめている家宰さんからお褒めの言葉を頂いた。

 僕が返事をすると、家宰さんは僕に耳打ちをしてきた。


「紅茶の確認を行った金髪の女性の方は、もしやスー様ではないでしょうか?」

「あ、はい。スーです」

「有難う御座います。実は先日の貴族の騒ぎの件で、お館様がスー様に謝罪したいと言っております」

「そうなんですか。何か事情がありそうですね」

「はい、少し訳ありでして。本日ギルドへの報告が終わりましたら、屋敷まで来て頂きたいのです。服装はそのままで宜しいかと」

「分かりました。大丈夫かと思いますが、念の為に確認を行います。あと、今荷物を運んでいる猫耳の子とスーと共に荷物を仕分けたスライムも連れて行って良いでしょうか?」

「問題御座いません。宜しくお願いします」


 この間の事件は大事だったからな。

 辺境伯様が出てくるのも致し方ないだろう。

 僕は、スーとシロと宿のメンバーの一人を呼び寄せて、先程の家宰さんの話をした。


「分かりました。辺境伯様にも色々とご迷惑をおかけしているので、是非とも合わせて下さい」

「お留守番は嫌だから、一緒に着いていくよ!」

「こっちは任せておけ。貴族絡みだから、シュンに任せるわ」


 という事で皆のオッケーが取れた。

 家宰さんに報告すると、夕方前に宿に馬車を寄越すそうだ。

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