散歩の三十話 不良品
訓練後は、当初の予定通りに宿の皆と一緒に倉庫整理へ。
ギルドで受付を済ませてから皆で川沿いの倉庫街に向かう。
因みにスーは魔法使いの帽子をかぶっていなかった。
何かスーの中で、帽子に対して思う所があるのだろう。
「「「おはようございます」」」
「おはよう。お、新入りもいるのか」
「スーと申します。宜しくお願いします」
「うむ、丁寧な挨拶だな」
ダンディな倉庫主に挨拶をすると、直ぐにスーの事にも気がついた様だ。
スーが挨拶をすると、倉庫主は満足したように頷いていた。
そして、僕達の事を作業場へ案内してくれた。
「今日やって貰うのは、この倉庫だ。紅茶を扱っている」
「どの様に清掃をすれば良いですか?」
「基本的には他の倉庫と同じだ。床の清掃に朽ちた木箱の破棄だな。木箱の清掃もしてくれると助かる」
「分かりました、頑張ります」
基本的な事は一緒なので、直ぐに作業を始める。
広い倉庫を掃除するのだが、皆も慣れてきたので効率が良くなってきた。
因みにスーは、箒を使っての掃き掃除をメインに行っている。
力持ちのシロは、ひょいひょいと不要になった木箱を運んでいる。
作業開始から四時間程で、倉庫内の清掃も一段落ついた様だ。
「流石だね、すっかり綺麗になっているな」
「僕達も段々と勝手がわかってきました」
倉庫主は、綺麗になった倉庫を見て満足そうに頷いていた。
と、ここで新しい荷物が届いた様で、直ぐにこの倉庫に勤めている人が中身の確認を始めた。
「これはアーサム産の紅茶でね。辺境伯様が接待用に注文したものだ」
「へえ、そうなんですね」
木箱の中に入っていた物は高級品らしく、注文先も領主様だった。
何だか紅茶の産地の名前が、前世と似ているな。
自動販売機の紅茶に書いてあった銘柄しか分からないけど。
おや?
届いた荷を調べている人の表情が良くないぞ。
スーも何かに気がついた様だ。
「もし予想が外れていたら申し訳ありませんが、こちらの紅茶はセーロン産の安い物ではありませんか?」
「嬢ちゃん、良い鼻をしているね。俺も同じ事を考えていたよ」
スーの考えと検品していた人の考えが一致している。
スーは紅茶に詳しいんだ。
そして、倉庫主も確認を始めているが、直ぐに表情が暗くなった。
「あの商会は、また荷を間違えたのか。またはワザとやったか」
「いずれにしても酷いですね」
「ああ、王都で紅茶の取引を一手に引き受けている商会がいるのだが、余り良くない噂がある貴族と繋がっているのだよ」
倉庫主もこれは予想外だったらしく、かなり憤慨していた。
「ちょっと辺境伯様の所に行ってくる。詳しく報告しないとならない」
「よりによって、領主様が頼んだ品物ですからね」
「これで何回目だよ。辺境伯様はとても良い人なんだけど、不正には厳しいからな」
そういうと、倉庫主は急いで着替えて辺境伯邸に向かっていった。
えーっと、僕達はどうすればいいのだろうか?
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