散歩の二十話 初めての依頼

 初心者講習も終わったので、折角だからギルド内の売店で買い物をする事に。

 他の初心者講習を受けた人達も、売店に向かっている様だ。


「すみません、初心者用の冒険者セットを二つ頂けますか? あと、毛布も二つお願いします」

「はいよ、後ろの連中も同じかい?」

「おう、同じ物を人数分くれ」

「了解、ちょっと待ってくれ」


 売店のおっちゃんが早速冒険者セットを準備している。

 初心者講習の後はよく売れるのか、あっという間に人数分用意してくれた。

 ついでだから、お勧めの物がないか聞いてみよう。


「他に初心者にお勧めの物ってありますか?」

「薬草の採取セットと薬草図鑑だな。魔物図鑑も最初のうちはお勧めだぞ」

「では、薬草の採取セットは二つで、図鑑はそれぞれ一つずつ下さい」

「俺も薬草セットを貰っておこう」

「あいよ、ちょっと待っていな」


 僕だけでなく、他の冒険者も一緒に色々な物を購入していく。

 高くはなかったけど、ちょっと痛い出費だったな。

 ここで、一緒に講習を受けた冒険者からとある提案があった。


「シュンよ、午後時間があるなら俺らと一緒に依頼を受けないか?」

「あまり大掛かりな物はできないけど、まだ時間もあるからな」

「ええ、大丈夫です。シロも大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ!」


 僕達も大丈夫だったので、みんなで依頼を受ける事に。

 総勢十人と一匹で選んだ依頼は、川沿いにあるとある倉庫整理。

 僕達の冒険者ランクでも全く問題なく受けられる内容だ。

 人数が多くても問題ないので、早速受付を済ませて現場に向かう。


「初心者冒険者か。お、嬢ちゃんも一緒か」

「そうだよ。こう見えても力持ちだよ!」

「そっかそっか、なら期待しないとな」

「うん!」


 出迎えてくれたのはちょっと小太りの頭がはげているおじさんで、直ぐに現場に案内してくれた。


「おおー、広いね」

「ゴミも沢山あるけどね。先ずはゴミを纏めて床を掃除してくれるかな?」

「よーし、やるよ!」


 一緒に来た他の人と共に倉庫の掃除を始める。

 確かアイテムボックスに袋があったはず、麻袋が複数出てきたぞ。

 箒も幾つか出てきたから、これも使おう。


「お、流石はシュンだな。箒を借りるぞ」

「麻袋も品質がいいな。繰り返し使えるな」


 早速倉庫の中を掃除する。

 身体強化の魔法が使えるシロは、大物を次々と運んでいく。

 あいたスペースを皆で掃いて綺麗にしていく。

 朽ちた木箱が多いので、中身がないのでとても楽だ。


「シュン、お前のスライムが腐った物を次々と消化しているぞ」

「スライムの習性なんですかね。とても助かりますけど」


 腐ってしまった果物とかは、アオがどんどんと消化していく。

 

「おお、綺麗にしているね。はは、腐ってしまった物も処分してくれているのか」

「僕の従魔はスライムなので、こういうのは得意です。朽ちた木箱とかはどうしますか?」

「燃やしてしまってもいいぞ。燃やす場合は川沿いでやってくれ」

「分かりました。纏めて処分します」


 僕は川沿いに行くと、先ず土魔法で穴を掘る。

 そこに木箱など、燃やすものを入れていく。

 麻袋に入れておいたゴミもまとめて穴に放り込む。

 そして、高温の火魔法で一気に燃やしてしまう。

 勿論、燃えカスには水魔法をかけて消火しておき、最後に土魔法で穴を埋めて完了。


「おーい、床の清掃も終わったぞ」

「こちらも全て処分が終わりました」

「お兄ちゃん、凄いね」

「そうだな。実技の時も見たが、魔法の応用がうまい」


 皆に褒められながらも、倉庫整理は三時間で完了。

 これには依頼主もびっくりしていた。


「うーむ、魔法使いが二人もいるがこうも手際がいいとは。ちょうど別の倉庫主が明日ギルドに同じ倉庫整理の依頼を出す予定だが、君達の事を紹介しておこう」

「いいのですか?」

「こういう事は冒険者ランクに限らず丁寧な仕事を求める物だ。他の荷もある事だしな。君達は十分信頼に値する」

「分かりました、頑張ります」


 初めての依頼をキチンとこなしたことで、次の依頼に繋がった。

 皆もとても嬉しそうだった。


「今日やった依頼が、これからの自分の指針となる。最初に適当にやった奴は、いつまでも適度だ。どんな仕事に限らず、出来るやつは仕事が丁寧だ。それを忘れるな」

「「「はい」」」


 宿に帰ってから店主に報告すると、戒めの意味も込めてアドバイスを貰った。

 僕やシロに限らず、他の冒険者にとっても響く物があったのだろう。

 こうして、初めての依頼は無事に完了したのだった。

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