散歩の十九話 まさかの個人戦
「はい、お待たせ。それでは、シュンとシロとアオの順番ね」
「はーい」
他の人の実技指導も終わり、いよいよ僕達の出番となった。
因みに他の人の戦いを見ていたけど、どう見てもあの二人よりも実力は上だった。
あの二人は、騎士試験に落ちて冒険者ならと冒険者の事を舐めていたのかもしれないな。
「あの、何でギルドマスターだけでなく職員の人もいるんですか?」
「シュン達では、わたし一人では無理だと判断したからだ」
「「「おー!」」」
いやいや、ギルドマスターは何言ってるのですか。
周りの人も盛り上がらないで下さい。
と言ってももう無理な状況なので、諦めることにした。
既にシロとアオは、やる気満々で準備をしているし。
「シロ、アオ、相手は戦いの達人だから身の守りを重点的にな」
「分かった!」
念の為にシロとアオに忠告しておいたけど、絶対に特攻するだろうな。
そんな事を思いながら、僕も構えた。
「では、始め!」
審判役の職員が合図をすると、ギルドマスターが一直線に僕に向かって来た。
ガキン!
「ほう、この攻撃を読んでいたとは」
「ギルドマスターが僕の事を見ていたので、念の為に魔法障壁を準備しておきました」
あぶねー、ギルドマスターがいきなり特攻しかけてきて、僕の事を殴りかかってきた。
実技が始まる前に、ギルドマスターがこちらをチラチラと見ていたので、警戒しておいてよかったよ。
僕はギルドマスターに蹴りを入れて距離を取ろうとするけど、尚もギルドマスターは僕との肉弾戦に持ち込んでくる。
シロとアオは……、職員の人と楽しそうに格闘しているぞ。
二人とも、僕の事を助けて貰いたいぞ。
「ふふふ、魔法使いと聞いていたが、格闘も出来るとは。これは面白いぞ」
「シロとアオの相手を少ししているだけですよ」
朝の魔法訓練の後に、シロとアオの格闘訓練をしている。
あの二人は遠慮なく殴りかかって来るので、こっちも必死なのだ。
少しは格闘訓練が役にたっているようだぞ。
ギルドマスターも手加減してくれているので、何とか防げている。
しかし密着した状態では、魔法を使う事ができない。
僕はちょっとある事を試してみた。
「よっ」
「これはこれは、考えるね」
少しジャンプして、その瞬間にギルドマスターに風魔法を放つ。
俺は風魔法の推進力で後ろへ距離を取れるし、ギルドマスターも防御体勢を取るので動けない。
すかさず距離を詰められない様に、エアバレットで牽制をする。
ギルドマスターは、風の塊をぶん殴って防いでいるよ。
「うむ、よく魔力を練っている。中々の威力だ」
「だったら、涼しい顔して防がないでくださいよ」
複数の属性を組み合わせて魔法を放つけど、全て防がれてしまう。
さっきあの派手な服の魔法使いの火玉を殴っていたけど、雷玉や水玉も殴って防ぐなんて半端ないな。
流石はギルドマスターと言われるだけあるぞ。
因みにシロとアオは、職員と色々と話をしてアドバイスを受けている。
貴方達、僕の事を助けなさいよ……
改めて体勢を整えて、魔法を放とうとした瞬間だった。
「時間です」
「「「うおー! すげー!」」」
審判をしていた職員から声がかかった。
実技指導に制限時間ってあったっけ?
僕達の戦いを見ていた周りの人からは、大きな歓声が上がっていた。
集中していたから、周りの様子に気が付かなかったな。
「凄かったね、お兄ちゃん」
「というか、シロにアオよ。何で僕の事を助けなかったの?」
「お兄ちゃんなら大丈夫だと思ったの!」
僕の側にやってきたシロとアオにさっきの戦いの事を聞いても笑顔で返されたので、僕は思わずガクリとしてしまった。
「素晴らしいな。シュンやシロは、どこで魔法を習ったのだ?」
「基礎だけで、後は独学です。なので、これというのはないです」
「ふむ、そうか。たまにギルドで魔法や格闘技の講習をやるから、時間があったら受けるように」
「はーい」
「有難うございます」
「他の者も武器講習があるから、受ける事をお勧めする」
「「「はい!」」」
ギルドマスターが僕やシロだけでなく、他の冒険者にも講習情報を教えてくれた所で講習は終了。
トラブルはあったけど、色々とためになったぞ。
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