散歩の十八話 あっという間の敗北
「それではこれから実技を開始します。これは、貴方達の実力をはかると共にこれから冒険者活動をする上での改善点を指摘します。治癒師などの後衛も遠慮なく来てください」
僕達の準備運動が終わった所で、ギルドマスターが声をかけてきた。
僕達は一番最後なので、他の人の戦いを見ることにした。
「ハハハ、では俺からいこうか」
「フフ、ストレス発散しないと」
あ、あの剣士と魔法使いがギルドマスターに勝負を挑んでいった。
もうね、待ってましたって感じだよ。
ギルドマスターもこの展開は折り込み済みといった感じで、余裕の表情でいる。
因みにあの治癒師は、ガチムチ職員に色々とアドバイスを聞いていた。
うん、極めて現実的な対応だろう。
「ああ、二人同時に仕掛けてきていいよ。そっちのボウヤは、腰にぶら下げている剣を使うがいいわ」
「くそ、舐めやがって」
「死んでも知りませんわよ」
ギルドマスターが同時に攻撃していいと言ったら、剣士と魔法使いはキレてしまったようだ。
冷静に戦っても二人はギルドマスターに勝てる見込みはないのに、これではどうしようもなさそうだぞ。
「くらいやがれ、せいやー!」
「ふふふ、燃えておしまいなさい!」
魔法使いが火玉の魔法を連発し、そこに剣士が突っ込んでいく。
一見してうまく連携が取れているように見えるけど、火玉は魔力がうまく込められてないし、剣士に至っては足が早くないという致命的な弱点があった。
「ふっ、せい、はあ」
「ぐわぁー!」
「きゃー!」
ギルドマスターは拳と蹴りで火玉を打ち消し、切りかかってきた剣士をひらりと交わすと、剣士の腕をとって魔法使いに投げつけた。
剣士と魔法使いが激突し、両方共に気絶してしまった。
魔法使いに剣士が持っている剣が刺さらないように、ギルドマスターは剣士の持っている剣を叩き落としてから投げ飛ばしている。
「はあ、剣士は身体能力不足で魔法使いは魔力の練度不足です。そういえば、どこかの伯爵家の三男が王都の騎士試験に落ちたと聞きましたが。二人とも基礎からやり直しですね」
威張っていた割には、二人ともあっさりと負けてしまった。
というか、僕から見ても弱すぎる。
二人は担架に乗せられて医務室に運ばれていった。
残された治癒師が、慌てて二人の後を追いかけていく。
ギルドマスターは、既に二人の実力を知っていたんだ。
元々騎士試験に落ちるレベルなので、大して強くないと。
親の威光で騒いでいるだけだと思っていたんだ。
「さて、他の人もどんどん行きましょう。受け身はしっかりとしてくださいね」
「「「はい!」」」
元々他の人は油断なんてしていないし、自分の実力を分かっている。
ギルドマスターや職員の人に戦いを挑み、その結果を真剣に聞いていた。
ギルドマスターや職員の人も、聞かれた事は丁寧に教えている。
あの二人にも、このくらいの謙虚さがあれば……
あの戦いを見れば、無理な話だな。
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