散歩の十七話 荷物講習
「それでは、これから実技に移る。忘れ物をしない様に確認をし、私の後についてくるように」
ガチムチの職員の座学が終わり、少しホッとした空気が流れた。
そして僕は両サイドの人物に睨まれながら、僕の後ろにいるシロの元に顔を見せた。
「シロ、ちゃんと話を聞いていたか?」
「ばっちりだよ。シュンお兄ちゃんは大丈夫だった?」
「僕の方も問題ないよ。さあ、皆の後をついて行かないと」
「はーい」
僕はシロの手を引いて、他の人から遅れないように後をついていく。
どうもあの剣士と魔法使いも、職員の監視の元で実技現場に移動する様だ。
二人の後ろをコトコトとついていく治癒師の女性。
うーん、あの二人に弱みでも握られているのかな?
あの二人についていくなんて、良い事は全くなさそうだけど。
職員の案内で後をついていくと、ギルドの裏手にある広いスペースに出た。
ここで実技を行うという。
うーん、ガチムチ職員の他にもアップ十分のギルドマスターもいるぞ。
先ずは持ち物の話らしく、僕達の前に幾つかの荷物が並べられていた。
「では、実技の前に幾つか話をする。この時期は寒いので、いくら南の辺境伯領だとしても夜は凍死の可能性がある。防寒対策を十分にする事だ。また、初心者向けの冒険者キットが売店で売っているから購入をお勧めする」
お、これは良い事を聞いたぞ。
この講座が終わったら、早速売店でシロの分を含めて購入するようにしよう。
他の冒険者も同じ事を考えている様だ。
「毛布などは人数分持っていて問題ないぞ。最近の物は薄手で暖かい性能が良いものが出ている。後はナイフも全員持っておけ。ナイフは調理や細工にも使えるし、なんにでも使えるぞ」
この辺りも売店で売っていそうだ。
売店の人に色々聞いてみよう。
僕の後ろにいる剣士と魔法使いは、とても暇そうにしている。
多分だけど、必要な物は治癒師の女性に任せる気なんだろうな。
これで持ち物の件は終わりで、これから実技に入るらしい。
座学だったり今も座って話を聞いていたので、体が固まってしまった。
まあ、無言のプレッシャーが一番大きいのだけど。
皆それぞれ体を動かす中、ふとギルドマスターが僕とシロに声をかけてきた。
「ふむ、そこの黒髪の少年と猫耳少女。名前はなんという?」
「あ、はい。僕はシュンで、この子はシロです」
「それで、スライムがアオちゃんっていうんだよ」
「シュンとシロとアオか。あなた達は一番最後にしましょう」
「はーい」
「分かりました」
一番最後に受けるのは別に問題ないし、シロとアオも手をあげていた。
剣士と魔法使いは、何か問題があるのだろうと俺たちの事を指さして笑っている。
全く、人の心配をする前に自分の心配をしろって思いたいよ。
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