散歩の十五話 初心者講座の申込と大暴れする二人

「何で俺が講習を受けなければ行けないんだよ!」

「そうですわ、納得がいきません」

「ギルドマスターからの指示です。受けなければ、冒険者登録を抹消されます」


 冒険者ギルドに入ったら、受付で揉めている冒険者のグループが。

 あいつらって、昨日宿の前で大騒ぎしていた連中だ。

 豪華な衣装を着た剣士と派手な服装の魔法使いが、受付のお姉さんに噛みついていた。

 地味な服装をした女性が、一生懸命に二人を宥めている。

 そしてお姉さんはニコリとしたままだ。

 笑顔だけど、こめかみがピクピクしているぞ。

 早朝なのでギルド内には多くの冒険者がいるが、全員がアホな冒険者グループに睨みを効かせていた。

 うん、僕達はできるだけ絡みたくないので、離れた受付に並んだ。

 というか、他の冒険者も同じ考えだった様で、一番隅っこの受付が一番人気だった。


「初心者講習をお願いします」

「はい、二名ですね。従魔も一緒に参加できます。開始する時はアナウンスをするので、再度窓口に来て下さい」

「はーい」


 十分間並んで、受付も直ぐに終了。

 そしてあの騒いでいる受付では、三人の周りを屈強な職員が取り囲んでいる。

 おや?

 先程の威勢はどうしたのか、派手な衣装の騎士と魔法使いは顔が青ざめている。

 そして、もう一人の女性は周りの人にペコペコと頭を下げていた。

 と、そこに小柄な格闘技スタイルの女性がやってきた。

 屈強な職員は、その女性に深々と礼をしている。


「お、ギルドマスターのお出ましだ」

「ははは、あの二人は洗礼を受ける事になるのか」


 うーん、どうもあの女性がギルドマスターの様だ。

 僕達と一緒に受付の列に並んでいた冒険者が、色々と教えてくれた。 

 にこやかな表情をしているけど、とんでもない圧力を放っているぞ。

 

「あの女の人、凄い強いね」

「おお、嬢ちゃん分かるか」

「うん、なんとなく感じるの」

「そうか。嬢ちゃんも一流の冒険者になれるぞ」


 冒険者はシロの事を褒めているけど、相手の強さを分かるのも重要だったような。

 冒険者は、シロとアオの頭を撫でていた。

 さて、冒険者ギルドの注目度ナンバーワンはどうなったのか。


「昨日も街中で騒ぎを起こしたばかりか、再び窓口で騒ぎを起こすとはね。これはお仕置きが必要かしら。フフ」

「「ヒーイ!」」


 背の小さな女性の迫力に、派手な服の剣士と魔法使いは完全に飲まれてしまっている。

 これはヤバいと、ようやく本能で理解した様だ。

 ずっと謝っていた女性も、顔が真っ青になっている。


「あなたが貴族の子息かどうかは、ギルドには関係ありません。逆に、あなたの不祥事によりあなたの育った領地からギルドが引き上げる事もあり得ますので」

「「あ、ああ……」」

「フフフ、この後の講習が楽しみですわね」


 あーあ、どうもギルド内で騒いだ事にギルドマスターがかなり怒ってしまった様だ。

 あれ?

 ギルドマスターは、この後の講座って言ったよね?

 もしかして僕達も巻き込まれるのかな……


「はい、初心者講習を受ける人は受付前に来て下さい」


 受付の人のアナウンスに、僕達や宿にいた人達だけでなくあの大騒ぎしていたグループも集まっている。

 何故か、派手な服を着た剣士と魔法使いが僕を睨んでいる。

 え?

 どういうこと?

 僕は疑問に思いながら、受付に向かったのだった。

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