散歩の十話 冒険者登録
「思ったよりも人は少ないね」
「冒険者は朝イチで依頼をする事が多いから、お昼にギルドに来る人は少ないんだよ」
「へー、そうなんだ」
前世で読んだ異世界者の本の受け売りだけど、ほぼ間違っていないだろう。
冒険者ギルドの中には受付と獲得した獲物を出す所があって、売店みたいな所もあった。
酒を提供する所はない様で、冒険者の数は少なく職員ばっかりだった。
ギルドの中をキョロキョロと見ているシロの手を引きつつ、先ずは受付に向かう。
「ようこそギルドへ。新規登録ですか?」
「はい。僕達が新規登録って分かったのは、皆さん冒険者の顔を覚えているからですか?」
「流石に顔を全て覚えるのは無理ですけど、この時間にギルドに来る人は大抵は新規登録ですから」
美人の受付のお姉さんと色々と話しながら手続きを進める。
というか、全ての受付のお姉さんが美人さんだ。
所定の用紙にスラスラと必要な事を書いていく。
この国はローマ字表記に近いので、僕でも何とか書けそうだ。
職業欄が選択式だったので、僕は魔法使いでシロは魔闘士にした。
登録用紙を渡すと、水晶みたいなものに手を置くように言われた。
白く光っただけで、特に異常はなかった。
もしかしたら、賞罰を見るためのものなのかな?
「はい、問題ないですね」
「冒険者登録にお金はかかりますか?」
「初回登録は不要ですが、再発行の時には費用がかかります」
「分かりました。あと、この子はどうすればいいですか?」
「従魔登録は、申請と従魔の証を身に着けて貰います。スライムの様に証を身に着けられない従魔には、こちらを飲ませて下さい」
受付のお姉さんが出したのは、青色のラムネみたいな物だった。
アオがぺろりとラムネみたいな物を食べると、アオの額に何か小さな紋章が現れた。
「はい、こちらで従魔登録は完了です。その紋章は消える事はないので再登録は不要ですよ」
「有難う御座います」
「はい、カードができましたよ。無くさないで下さいね」
「はーい」
これで登録に関しては完了で、シロも元気よく手を上げてカードを受け取っていた。
「あと、明日の午前中に初心者向けの講座があるので、良かったら受けて下さい」
「講座に費用はかかりますか?」
「無料ですのでご安心を」
きっと少しでもギルドの収入が増えるように、このような講座を開いているのだろう。
僕としても有り難いので、申し出を受ける事にした。
「他に何か質問はありますか?」
「えっと、二つほど。この街でお勧めの宿屋があれば教えてほしいのと、ここにくる途中でオオカミを倒したので買い取りができるかです」
「冒険者登録が終わっていますので、素材は提出できます。オオカミの討伐は常設依頼ですので、冒険者の実績としてもカウントされます。初心者の冒険者向けの宿としてギルドの近くにコマドリ亭がありますので、そちらをお勧めします」
「分かりました。色々と有難う御座います」
「ありがとう!」
こちらの質問に色々と教えてくれたので、非常に助かった。
受付のお姉さんと別れて、素材買い取りの所に向かう。
そこには厳ついオッサンを筆頭に、筋肉ムキムキの人が沢山いた。
「すみません、素材の買い取りをお願いしたいのですが」
「おお、ボウズちょっとまってな」
厳ついオッサンが、解体作業の手を止めてこちらにやってきた。
冒険者上がりの人かなって位傷だらけだな。
僕はアイテムボックスから、討伐してアオが血抜きしてくれた素材をテーブルの上に出した。
「お、綺麗に倒したんだな。血抜きも問題ない」
「アオちゃんが血抜きしてくれたんだよ」
「そうか、スライムを使ったのか。肉も毛皮も使えるし、満点だな」
「やったー!」
オッサンに素材の取り扱いを褒められて、シロとアオは飛び跳ねて喜んでいた。
やっぱり素材の良し悪しは、換金に響きそうだな。
「やはり綺麗に倒した方が、査定は良いですか?」
「そりゃ違うよ。ボウズが来る前に貴族っぽい冒険者が同じオオカミの素材を持って来たけど、もう傷だらけに毛皮も焦げていて散々だったよ」
「素材がボロボロだと、流石に高額査定は無理ですね」
「だろう。なのに何で低い査定なんだと大声で叫んでいたよ。周りにいた冒険者は失笑していたけどな」
やっぱり、どうやったら高額査定をされるか分かっていない冒険者がいるんだ。
人間的に問題ありそうだから、極力関わりたくないなあ。
素材の換金も終わったので、少し早いけど受付のお姉さんに教えて貰った宿を目指そう。
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