散歩の三話 天界での目覚め その二

 俺が色々と納得していると、改めて姿勢を正した女性からお願い事を言われた。


「実は天界行きのバスに乗り天界に来たことにより、貴方が元いた世界で生まれ変わる事ができなくなりました」

「こういう所に来ているので、何となく想像していました」

「アイカワシュンさんには、新しい世界に転生してもらいたいのです」


 何か通勤の行き帰りに、スマホでポチポチ見ていたマンガにでていた展開と似ているな。

 まさか俺に世界を救えって言ってくるのではないだろうか?


「シュンさんには、新しい世界を旅して欲しいのです。トラブルが何か起きたときにだけ対応してもらえれば」

「えーっと、世界を救うとかそんな事はありますか?」

「いえいえ、命をかけて世界を救うとかそんな事はありません。そういう状況でしたら、命が幾つあっても足りません」


 よかった、血で血を洗う世界に行かなくて済むんだ。

 俺だって、いきなり戦闘とかは嫌だし。


「もし、そういう修羅の世界がお望みでしたら、お連れする事もできますが?」

「いえいえいえ、結構です。命のやり取りは勘弁です」

「そうですか。そういう世界ですと、需要も多いですよ」


 流石に修羅の世界は勘弁です。

 折角転生したのに、直ぐに死んでしまいます。


「話を続けます。新しい世界では魔法など元の世界にはない要素があります。機械文明は未発達ですので、昔の世界を想像してもらえれば良いかと」

「その世界では、殆どの人が魔法を使えるのですか?」

「いえ、割合としては少ないです。一割と見てもらえれば良いかと。シュンさんには魔法適性がある状態で新しい世界に転生します」


 新しい世界に魔法はあるけど希少なのか。

 でも、自分に適性があるのは助かるな。


「固有スキルとして、アイテムボックス、鑑定、ワールドマップを授けます。アイテムボックスには、当面の物資を入れておきます。きっとシュンさんの役に立つでしょう」

「そういうスキルは有り難いです。特にアイテムボックスとワールドマップは、冒険に必須ですね」


 目の前の女性とそんな話をしていると、腕の中で寝ていた猫耳少女とスライムがモゾモゾと動き出した。

 もしかして、目を覚ましたのかな?

 そう思っていたら、猫耳少女がうっすらと目をあけた。

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