千三十二話 ガッシュ男爵家の状況
無事に、入園準備に関係する行事も終わりました。
制服だけは制作中だけど、それは完成までのお楽しみですね。
ちなみに、入園費は既に払い込んであります。
貴族や豪商などは高めで、平民は低く設定しています。
特待生になると、一部費用が免除になります。
もっとも、サキさんなどはいきなり陛下からの指名依頼でかなりの報酬を得たので、こちらも必要なお金は納めてあります。
「来年度入園するものの納付率が高く、殆どのものは支払い終えております。それも、アレク様たちと一緒に学べるというのが大きい模様です」
今日は副宰相として学園に行っているけど、先生は僕が副宰相の時は様付けで生徒の時は君付けで呼んでいます。
この辺りは、うまく切り替えていますね。
例年まだ半分くらいの納付率なので、今年はかなり凄いそうです。
「まだ払い終えていないのは例の面々ですが、納付期限までまだあるので暫く様子見をします」
「何というか、ある意味予想通りですね」
「財政的に厳しい貴族の中にはたまに何故貴族が入園費を払うのかというものがおります。ただ、今回は当主が強制訓練を受けていて決裁できないためかと思われます」
ガッシュ男爵家は、元々当主が仕事で不祥事を起こして一ヶ月の強制訓練を言い渡されていた。
もうそろそろ終わる予定だし、支払い期限はあと一ヶ月先なので様子見ですね。
それに、下手に手を出すとやぶ蛇になりそうです。
「カリキュラムの準備も問題ありません。元々補習を行っていたので、Eクラス用のカリキュラムも問題なく準備できております」
「僕たちは、普通のカリキュラムを受けるだけですもんね」
「校外学習を少し多めに入れております。様々なことを経験するのは、とても良いことだと実感しております」
来年の授業準備も順調だし、何も問題ないです。
予算執行状態も問題ないし、本当に順調ですね。
施設改修も順調だし、最悪僕とスラちゃんがいれば大抵のことは対応できます。
ということで、今日の話し合いは終了です。
僕はゲートを発動して、ローリーさんとともに王城に戻りました。
「「戻りました」」
「「「おかえりなさい」」」
宰相執務室に戻ると、職員が僕を出迎えてくれました。
確か、宰相は軍の会議に参加していたんだっけ。
そんなことを思い出しながら、僕は席について報告書を作り始めました。
ついでに書類も処理しておこうっと。
ガチャ。
「ふう、戻ったぞ。おっ、アレク君も学園から戻っていたのか」
「宰相、おかえりなさい」
「「「おかえりなさいませ」」」
何だかちょっとお疲れモードの宰相が、執務室に戻ってきました。
すると、軍務卿とともにサザビーズ侯爵もお疲れモードで宰相執務室に入ってきた。
これは、何かあったのは間違いなさそうですね。
シーラさんとローリーさんがお茶を準備していたら、何故か僕も話に参加するようにと宰相に呼ばれた。
取り敢えず、処理した書類を宰相の机の上に置いてっと。
ドン!
「宰相、報告書と処理した書類です」
「アレク君は、相変わらず仕事が早いね……」
「「ははは」」
宰相の苦笑しながらのボヤキで場の雰囲気がちょっと柔らかくなったところで、話を始めます。
すると、軍務卿がこちらも苦笑いしながら話し始めました。
「まあ、大したことではないのかもしれないが、あのガッシュ男爵が二週間の追加訓練を受けることになったんだよ」
「一ヶ月では、どうにもならなかったんですね」
「普通は一ヶ月もいらないんだけどね。食事なども文句を言うし、訓練も勝手にボイコットする。全くもって話にならなかったよ。なので、僻地での訓練に切り替えることにした。もちろん、その間は貴族当主としての権限は停止する」
僻地での野営訓練をするそうなので、きっと効果抜群でしょう。
それに、二週間なら学園入園に関する費用も問題なく支払えます。
僕の方の懸念も、問題なさそうですね。
「しかし、私も訓練を拝見しましたが久々に見るクズ貴族ですな。あの息子が娘と同じ学年だと考えると、思わずゾッとしてしまいます」
サザビーズ侯爵が愚痴をこぼすくらいだから、本当に酷い訓練だったんだね。
僕も、なんとなくその訓練風景が目の前に浮かびます。
本人が更生するのは、かなり難しそうですね。
「もし、二週間経っても更生しなかったらどうするんですか?」
「正直、お手上げなところはある。法律の中で、著しく成績不良の場合は貴族籍剥奪という文言がある。今回は貴族籍停止で再々訓練、兄を暫定当主にする。ただ、その兄も出来が良くないのが頭痛の種だよ」
宰相は思わず苦笑いをしていたけど、僕はその可能性が高いと思うなあ。
取り敢えず、結果が出るのは二週間後ですね。
「アレク様のような方が上司なら、部下も一生懸命働くものです。それなのに、あやつは自分は貴族なのだからと無能なのに上司にしろと言っております」
サザビーズ侯爵の愚痴に似た話に、ローリーさんたちは激しく同意していました。
僕はまだまだ子どもだから、幾ら官僚試験に合格したといえこれからだと思いますよ。
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