千二十七話 僕の屋敷にみんなを招待です

 さてさて、僕は通信用魔導具をアイテムボックスから取り出して、色々と連絡事項を処理していきます。

 入園説明会中は、音が鳴らないようにしていたもんね。

 ポチポチと処理をしていると、またまたリズがブーブー文句を言い始めました。


「あー! また、お兄ちゃんがお仕事モードになっているよ!」

「もう少しで終わるから。ちょっと待っていてよ」

「本当にもうちょっとで終わるの?」


 リズが懐疑的な表情を僕に見せているけど、昨日出来るだけお仕事を終わらせたのでそんなにやることはないですよ。

 チャチャっとお仕事を終わらせると、リズだけでなくエレノアまで頬を膨らませて僕のことを睨んでいた。


「あんなに早く通信用魔導具を使用するなんて。信じられないですわ」


 メアリがびっくりした表情で僕のことを見ていたけど、祖父のカーセント公爵はここまで速く通信用魔導具を扱えないそうです。

 他の人は、こんなところでも仕事をしているんだとかなり困惑した目で見ていた。

 いやいや、ちょっとした返信をしただけですよ。

 すると、今度は保護者が僕たちのところにやってきました。


「ほらほら、今日はアレク君も王城でのお仕事はお休みなのだから、こんなところで仕事をしなくていいのよ」

「そうよ、今日はゆっくりした方が良いわよ」


 ティナおばあさまとアリア様だけでなく、カーセント公爵や他の人たちもうんうんと頷いていました。

 だから、そんなにお仕事はしていないですよ。

 すると、リズがこんなことを言ってきました。


「じゃあ、みんなをリズのおうちに招待するよ! 午後はね、みんなで薬草を集めるんだ!」


 なんというか、既に決定みたいに話をしているんですけど。

 というか、クラスメイトの半分近くが来ることになるのではないかな。

 しかも、スラちゃんは屋敷にいる侍従のお姉さんたちには連絡済みですと触手をふりふりとしていました。

 結局夕方までに王都に送ればいいということになり、僕たちの屋敷に招待することになりました。

 アリア様は王城に戻るそうだけど、ティナおばあさまは一緒についてくるそうです。

 ということで、荷物を保護者に預けた人たちから僕が繋げたゲートを潜って行きました。

 すると、直ぐに元気いっぱいな声が聞こえました。


「「「おかえりー! こんにちはー!」」」


 庭で遊んでいたミカエルたちが、僕たちのところにやってきました。

 この前の王都大教会での奉仕活動で一緒だった人たちもいるので、ミカエルたちは直ぐに挨拶をしていますね。

 レイカちゃんたちや辺境伯家の双子ちゃんたちもいるけど、ルシアさんとイヨがみんなの相手をしてくれたみたいです。


「クカー、クカー」


 いつもながらドラちゃんが庭の片隅で野良猫と共に寝ていたけど、大きい猫がいるというのがこの場にいる人の共通見解でした。

 そして、全員を応接室に案内しました。

 すると、まさかの人がこの場にいました。


「やあ、アレク君、リズちゃんお帰り」

「「辺境伯様!」」

「「「えっ?!」」」


 お隣の屋敷にいるはずの辺境伯様が、何故か僕の屋敷に来ていました。

 辺境伯様に初めて会う人たちは、何が何だか分からないみたいですね。


「この領地に貴族家のものが来るのだから、挨拶をしないわけにはいかないだろう。それに、アレク君とリズちゃんのクラスメイトなら尚更だ」


 思わずティナおばあさまの方を向くと、僕にウインクしてきました。

 ティナおばあさまが、通信用魔導具で辺境伯様に連絡してくれたんですね。

 そして、サキさんやレシステンシアさんたちとにこやかに握手をしながら挨拶をしていました。

 優秀な入園予定生が辺境伯領に来るだけでも、大きな影響があるそうです。


「アレク君とリズちゃんと仲が良い人であるだけで、素晴らしい人だとすぐに分かるさ。そんな人と縁を結べただけでも、我がホーエンハイム辺境伯家にとって大きいのだよ」


 みんな将来は仕事先もいいところに行くはずだし、後々のことも考えると顔見知りになるだけでも良いそうです。

 とっても貴族的な考え方ですね。

 そして、辺境伯様はこんなことを言ってきました。


「入園式には、私とイザベラも参加する。あの小さかった二人の晴れ舞台だ、私たちにも感慨深いものがある」


 そっか、辺境伯様はティナおばあさまとともに僕とリズの後見人でもあるんだよね。

 自分の子どものことのように、嬉しそうに話をしてくれました。

 その後は、昼食の時間まで辺境伯様とティナおばあさまが色々な話をしてくれました。

 僕とリズだけでなく、他の人にとってもとてもためになる話でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る