九百八十話 カノープス男爵を調査その四
すると、ミカエルたちはカノープス男爵夫人の側についていた使用人に近づいた。
「「「お話、聞かせてください!」」」
「えっ、ふふ、分かりましたわ」
僕の側にいたので何となく事情は分かっていたみたいだけど、まさか自分に聞かれるとは思ってもみなかったようだった。
それでも、笑顔でミカエルたちのインタビューを受けていた。
町の人も普通にインタビューを受けてくれたし、そう考えるとこの町の人はとても人柄が良いのかもしれない。
「「「ありがとー」」」
「いえいえ、どういたしまして」
そして、ミカエルたちは次の人に話を聞くために元気よく部屋を出て行った。
ルーシーお姉様も一緒にメモを取っているし、聞き漏れはなさそうです。
その間に、僕たちもお仕事を進めます。
「取り敢えずここ数年間の予算状況が分かったけど、カノープス男爵夫人が嫁いでこなければ破産していたのだな」
「あれだけのお金を溜め込んだのは、先代以前ですね。今の当主になってからは、浪費するばかりです」
ルーカスお兄様とサギー伯爵が思わずため息をつきながら再集計された帳簿を手にとっていたけど、捕まったカノープス男爵の浪費が余りにも酷すぎる。
しかも、領内では色々なものが手に入らないので、わざとお隣のケイマン男爵領にダミー商会を作っていた。
そして、ダミー商会はケイマン男爵家に税金を納めることもしていなかったので、現在ダミー商会に軍とケイマン男爵家の兵が入って家宅捜索をしているそうです。
思ったよりも、大きな事件になりそうです。
「税収自体は確かに少ないけど、税金を納めなくていいレベルではない。遡り適用範囲があるからなんともいえないけと、数年分の追徴課税は免れないな」
「でも、あれだけのお金が入った壺があるので、余裕で追徴課税は支払えます。あとは、領地改良計画を立てて順に対応するしかないですね」
ルーカスお兄様とサギー伯爵の話した言葉が全てでしょう。
ケイマン男爵家に払わなければならない税金もあるだろうし、本格的な対応はその辺りが落ち着いてからですね。
そして、ちょっと疲れた表情のリズとジンさんたちが屋敷に帰ってきました。
「「「魔物、たくさん倒したよ!」」」
「いやあ、良いストレス発散になったなあ。久々に全力で動いたぞ」
「全てこの村の冒険者ギルドに卸したわ。解体担当の職員も、かなり嬉しそうにしていたわね」
「多いっていっても、このくらいなら誤差の範囲ね。たまに冒険者や兵を使って害獣駆除をすれば問題ないわ」
どうやら、ジンさんたちにとっては手頃な量だったらしい。
魔物の強さも普通の冒険者や兵なら余裕で対応できるみたいだし、被害が出ないうちに対応できて一安心です。
すると、リズがあることを聞いてきた。
「お兄ちゃん、ミカちゃんは何をしていたの?」
「この屋敷の使用人に、この村の良いところを聞いているんだよ」
「じゃあ、リズも手伝ってあげるね!」
リズだけでなく、エレノアたちもミカエルたちのところに向かって行ったけど、本当に元気ですね。
ジンさんたちも、思わず苦笑いしていました。
すると、ジンさんがこんなことを言ってきました。
「そうそう、それで思い出したぞ。ギルドの職員が、ちょっと前まで林業もしていたって言っていたな。人手が少なくなって辞めたみたいだか」
「それって、ある意味大チャンスじゃないですか。王都や辺境伯領だけでなく、今はどこも開発を行っていて木材が必要ですよ」
「俺もそう思ったぞ。キチンと金を払えば、人は集まりそうだがな」
思わぬ商機に、他の人もうんうんと同意していました。
カーセント公爵や財務監査官曰く、この状況でもそういう産業を推し進めるのは大いに歓迎だそうです。
国としても、税収が増えて良いことらしいです。
そして、屋敷の使用人に話を聞いてきたミカエルたちも、何か情報を得たのか僕たちのところに戻ってきた。
にこりってしているから、良い情報みたいです。
「あのね、凄い薬草が採れるんだって!」
「薬草いっぱいだって!」
みんなで凄い薬草っていっても流石に分からないので、一緒にいたルーシーお姉様に話を聞いてみた。
「どうも、貴重な生薬や薬の原料になる薬草がたくさん採れるそうよ。ただ、どのくらい貴重なのかは分からないから、治療研究所の研究員とかを派遣してもらわないとならないわ。あと、暫く手つかずだったから、魔物がいるかもしれないって言っていたわ」
それでも、良い情報なのは間違いないですね。
カノープス男爵夫人も、初めて知ったとかなり驚いていました。
すると、ここでカーセント公爵とティナおばあさまが動き始めました。
「ふむ、ならこの領の兵の訓練を兼ねて森と薬草が採れるところの害獣駆除を実施しよう。魔物が取れれば、臨時のボーナスにもなる」
「冒険者にも依頼をかけましょう。今回は衛星都市建設に使う木材と研究に使う薬草のサンプル調査として、国からの依頼にしましょう。そのくらいの予算は、使っても問題ないわ」
カーセント公爵経由で陛下の承認も得てくれたので、さっそく明日朝から動くことになりました。
直ぐに、この村の冒険者ギルドにも声をかけるそうです。
そして、ミカエルたちにはまたまたお願いがあります。
「じゃあ、ミカエルたちは明日は教会で奉仕活動をしながら町の人にお話を聞いてくれないかな?」
「「「頑張るよ!」」」
ミカエルたちは、両手を上げてやるぞーってアピールしていました。
このままいけば、意外となんとかなりそうな気がしてきました。
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