九百六十四話 もうそろそろ出産ですね

 こうして段々と衛星都市建設が始まったのだけど、肝心の木材が足りません。

 辺境伯領で使う分の木材はいつもの森から切り出しているのだけど、流石に衛星都市建設に利用はできません。

 なので、各地にお願いしている分の木材を受け取りに行きます。

 ちなみに、最近はそこまで大きな都市開発が無くて林業が停滞気味だったらしく、衛星都市建設計画でたくさんの木材を使うのはとってもありがたいということです。


「わあ、お腹がとっても大きい!」

「あっ、動いたよ!」

「ふふふ、もうすぐ出産だからなのよ」


 今日はブランターク男爵領に来ているけど、もう出産間近のルルーさんとクラヴィーアさんの大きなお腹に釘付けです。

 リズたちだけでなく、ミカエルたちもお腹に耳を当てたりしていました。

 特に、いとこが生まれるとあってかレイカちゃんはたまにお腹にいる赤ちゃんに話しかけていました。


「お腹の中でもすごく元気に動いているのよ。きっと活発な子が生まれるわ」

「私も同じよ。こうして胎動を感じると、母親になるって実感を感じるわ」


 ルルーさんとクラヴィーアさんが愛おしそうにお腹を撫でているけど、本当に表情が柔らかくなったよね。

 みんなほっこりしているのだけど、この雰囲気をぶち壊す残念なお兄様が一人。


「ルルー、出産が近くなって何か問題はないか? 必要なものがあれば、遠慮なく言えよ」

「だから、何度も言っているでしょ。お兄ちゃんに用意してもらうものは何もないって」


 残念なシスコンお兄ちゃんになっているジンさんだけど、流石にルルーさんに無理をかけないためなのか大人しめにしています。

 レイナさんも、今日はジンさんの見えない手綱を強く握っていますね。


「おとーさん、おねーちゃんを困らせちゃダメなんだよ! おねーちゃん大変な時なんだから」

「はい……」


 そして、ジンさんは五歳の娘に説教までされていました。

 どっちの方がしっかりしているかは、直ぐに分かりますね。

 ジンさんは、本当にルルーさんが絡むと駄目になります。

 そんなシスコンお兄ちゃんはさておき、僕とスラちゃんはちゃちゃっと仕事を終わらせました。

 木材をアイテムボックスに入れて、衛星都市建設現場に行って倉庫に出せば終わりです。

 正味五分もあれば終わります。

 後は、職人さんがゴリゴリと加工していくだけです。

 念の為に、水魔法を使って木を乾燥させています。


「アレク君は、昔から本当にしっかりとしているね。今日も先にぱぱっと仕事を終えるし、ストレスにならないように配慮もしてくれるなんてね」

「なっ、俺はアレク以下なのかよ!」

「お兄ちゃんは、私に絡むと間違いなくレイカちゃん以下よ」


 あっ、ジンさんが僕どころではなくレイカちゃん以下と言われて崩れ落ちちゃった。

 これはもう復活しなさそうなので、先に屋敷に送ってあげます。

 うん、何だかとっても静かになった気がするよ。


「じゃあ、お姉ちゃんの負担にならないように、そろそろ帰りましょうね」

「「「はーい」」」


 お話もたくさんしたので、ミカエルたちもとっても満足です。

 素直に、レイナさんの指示に従っていました。

 次に会うのは出産後なのかなって思いつつ、みんなで屋敷に戻りました。

 ジンさんはまだ復活していないみたいだけど、そのうち復活するでしょう。

 明日は別の領地に木材を取りに行くけど、またまたちびっ子軍団がついてくる予定です。


「じゃあ、この後は勉強ね」

「「「えー!」」」


 そして、昼食までまだまだ時間があるので、レイナさんによる勉強がはじまっちゃいました。

 しかも、リズたちも巻き込まれています。

 このくらいは頑張ってもらわないと思いながら、僕とスラちゃん、そしてプリンは衛星都市建設現場に向かいました。

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