九百六十三話 ノエル先輩頑張ります
今日は、井戸と倉庫に仮設住宅を作ります。
王都で研修中の近衛騎士のノエルさんが、土魔法が使える新人近衛騎士と魔法使いを連れてきました。
魔法の訓練を兼ねて、土魔法で色々なものを作るそうです。
僕とスラちゃんしか土魔法が使えないから、とっても助かります。
「こ、この土壁をアレク副宰相の魔法で作ったのですか?」
「合体魔法を使ってだけどね。この土をならしたのも、アレク君とスラちゃんの土魔法なのよ」
「はあ……」
先日広大な土地をならして高くて頑丈な土壁を作ったのが、新人兵と近衛騎士には信じられないみたいです。
ノエルさんは以前にも災害現場で仮設住宅を作った経験もあるし、この辺は全然問題なくできます。
ということで、早速軍の施設を作りましょう。
「ノエルさん、最初は五十人くらい泊まれれば良いんですよね?」
「ええ、そのくらいです。どちらかというと、資材置き場を広めに作ったほうが良いかと。当面は、盗難対策の為に軍の施設内で資材を管理します」
大きい木材とかを盗む人がいるのかなと思ったら、意外といるそうです。
でも、軍の施設内だったら防犯対策もバッチリですね。
では、分担して作っちゃいましょう。
僕とプリン、スラちゃんとリズで、大きな倉庫を作ります。
シュイン、シュイン、シュイン、ズゴゴゴ。
まだ使用していない軍の施設のグラウンド予定地に、大型の倉庫を作っていきます。
ただの倉庫だけでなく、木材の加工をするためのスペースや様々な道具をしまうためのスペースも作ります。
「どこか、修正するところはありますか?」
「あ、ああ。今のところ大丈夫だ。しかし、ボウズの魔法は凄いな」
同行した職人さんにも使い勝手を確認してもらい、オッケーをもらいました。
こういうのって、作る側の満足だけだと使う側が不便することがあるもんね。
スラちゃんが作った倉庫も、キチンと確認してもらいました。
すると、職人さんがあるリクエストを。
「あの転がっている岩を幾つか持ってきてくれないか? 石畳を敷くための材料にしたい。出来る事はやらないとな」
「じゃあ、リズが運んであげるよ」
「エレノアも運ぶよ」
石切り場に移動した岩の件のリクエストですね。
僕たちとしても、ちょうど試して貰おうと思ったんだよね。
スラちゃんとプリンも行ったから、きっと大丈夫でしょう。
その間に、僕は井戸を掘り当てておきましょう。
「せ、先輩、仮設住宅を作るのがとても大変です……」
「もっと意識を集中して、完成形をイメージしながら魔力を制御するのよ。大丈夫、あなたの実力なら充分に出来るわ」
ノエルさんは、新人魔法使いに的確に指導をしていました。
初めてノエルさんと会った時はまだ新人の近衛騎士だったけど、今やこうやって部下を指導する立場になったんだね。
そう思うと、何だかとっても感慨深いです。
では、井戸もできて水質も問題なかったので、仮代官邸を取り出してお茶の準備を行いましょう。
「ノエルさん、凄いです。もう、立派な先輩ですね」
「いえいえ、そんなことはないですよ。私はまだまだです」
仮代官邸の中でお茶を飲んでいるけど、僕たちはノエルさんのことで盛り上がっていた。
リズたちも褒めていたけど、当のノエルさんはかなり謙遜していた。
でも、初めて会った時に比べると、魔力制御もとても上手になっていると思うよ。
「ノエル先輩は、指導も的確なのにとても優しいので凄い人気があるんですよ」
「近衛騎士なのに威張らずにいて、尊敬している人も多いですね」
「ノエル先輩に抱きつくのが流行っているんです。とても可愛らしい先輩って、みんな大好きなんですよ」
ノエルさんの後輩が色々感想を言い合っていたけど、一番最後のところはノエルさんの背が低いからマスコットみたいにしている気がする。
それでも、ノエルさんはしょうがないわねと苦笑しながら受け入れているそうです。
こんな可愛らしい先輩に教えてもらえるなら、きっと後輩もやる気を見せるでしょうね。
「じゃあ、十分に休んだみたいだから続きを行うわよ」
「「「はい!」」」
そして、ノエルさんがみんなに気合を入れると、リズやスラちゃんたちも手を上げていました。
僕ももう少し頑張ろうかなと思いながら、仮大官邸を後にしました。
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