九百四十五話 兵の仮宿舎を作ります

 ローリーさんが淹れてくれたお茶に、アイテムボックスからお菓子を取り出しました。

 久々に大魔法を使ったから、甘い物が体に染み渡ります。


「街道の整備と住宅の建設、それに畑も作らないとならない。資材を集めて保管するところも必要だな」

「石材や木材は、マジックバッグに入れて運ぶこともできますね。畑も、冬のうちにある程度は形にしたいですね」

「食料の補充も必要だ。やることは沢山ある」


 順番にどんな事をするのか確認をしていき、どのくらいの日程で進めていくのか詰めていきます。

 僕とスラちゃんはお仕事があるので、ポッキーが僕たちの代わりをすると張り切っています。

 土魔法ならノエルさんが得意だし、何よりも以前に仮設住宅を作った経験があります。

 とりあえずということで、仮代官邸の隣に兵の宿舎を土魔法で作って今日は終わりにします。

 アパート型の仮設住宅にしようと、スラちゃんと確認しました。


「じゃあ、またリズがお手伝いするよ」

「今度は、エレノアもお手伝いするの」


 エレノアまで合体魔法の魔力を提供すると言ったので、ありがたく使わせてもらいます。

 ではでは、さっそく始めましょう。


 シュイン、シュイン、シュイン。

 ズゴゴゴゴゴ!


「これは凄いな。アレク君の魔法は、ここまで上達したか」

「もはや、国一番の魔法使いですぞ」


 またもや辺境伯様とグロスターのおじいさまが驚いていたけど、今回は目に見えて建物ができるもんね。

 一階辺り十部屋で三階建てなんだけど、一階の二部屋は男女別でトイレとお風呂をつけました。

 建物ができたら、みんなで明かりの魔導具とトイレ魔導具を取り付けました。


「辺境伯様、毛布とか敷布団とかはないんですけど、とりあえずこれだけあれば足りますか? もう一棟建てます?」

「今は、これで良いだろう。もう一棟建てるにしても、住み心地とかを確認してからだね」


 ということで、辺境伯様のオッケーも貰ったので今日はここまでにします。

 もう一度測量とかするので、この後辺境伯領兵や測量の人が泊まり込むそうです。

 一旦、辺境伯様の屋敷に移動します。


「あら、おかえりなさい。早かったわね」

「「「おかえりー!」」」


 屋敷に着くと、イザベラ様と勉強をしていたミカエルたちが僕たちを出迎えてくれました。

 みんな興味津々ということで、ジェイドさんとソフィアさんとノエルさんも加わって報告することになりました。


「まず、アレク君たちの魔法で、一キロメートル四方の土地が平らになった。その後、スラちゃんがアイテムボックスから二階建ての家を取り出したので仮設の代官邸とし、再度アレク君たちが三階建ての建物を土魔法で作った。さっそく、午後から測量の為の兵などを派遣する」

「「「はっ?」」」

「「「すごーい!」」」


 辺境伯様が至極真面目に説明すると、反応が二つに分かれた。

 ジェイド様とかは状況を飲み込めなくてぽかーんとしちゃい、逆にミカエルたちは僕たちが大魔法を使ったととても喜んでいた。


「父上、既に町の基礎となる地盤工事が終わったということですか?」

「街道の整備や区画決めなどはあるが、基礎は終わったと言えよう」

「はっ、はあ……」


 うん、ジェイド様はまだ状況を理解できていない。

 時々考える仕草をしながら、でもなあって腕を組んで考えていた。


「どんなのか、見てみたい!」

「「「みたいー!」」」


 一方、ミカエルたちは町の建設現場を見たいと大興奮していた。

 というか、ジェイド様たちも実際に現場を見てみたいと言っているね。

 すると、ここでグロスターのおじいさまの通信魔導具に連絡が入った。


「ふむふむ、報告した内容が良く分からないので、昼過ぎに宰相と内務卿が現場を見に来たいと言っておる。まあ、目の前で見ていた儂もいまいち信じられなかったがな」

「ふむ、では測量担当を運ぶついでに皆に現場を見てもらおう。昼食を食べた後が良さそうだな」

「「「わーい」」」


 こうして、昼食後にみんなで町の建設現場を見に行くことになりました。

 ミカエルたちは現場が見たいのか、早く昼食を食べようと僕たちを急かしていました。

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