九百四十四話 さっそく作業を始めます

 翌日、さっそく町を作る現場に向かいます。

 といっても、スラちゃんが現地まで行って僕たちをゲートで迎えにくる算段です。

 初日なのでミカエルたちは参加できないけど、リズたちとグロスターのおじいさまは現地確認に行きます。

 護衛として、ポニさんたちもついてきます。

 ドラちゃんはどうしようかと思ったけど、今日はミカエルたちも屋敷にいるのでお留守番です。

 代わりに、やる気満々のポッキーがついてきます。


 シュッ。


「あっ、スラちゃんが帰ってきた!」

「じゃあ、現地に行こうか」


 辺境伯様の合図で、僕たちはスラちゃんのゲートを潜りました。

 以前、国境の町に行く際に通った街道沿いに到着しました。


「わあ、周りは原っぱでなにもないね」

「川があるけど、森は少し離れているよ」


 リズとエレノアが周囲を見渡しているけど、原っぱと川しかない所です。

 でも、森を切り開く必要はないので、その点は楽かもしれません。


「ここを拠点にして、町と畑を作る計画だ。あと、この先にある村も拡張するぞ」

「あっ、帝国に行くときにご飯を食べた村だ!」


 計画は二段構えで、領都寄りの土地に新たな町を作るのと、既存ある村の拡張です。

 国境の町も住宅街の整備を進めるけど、これは申請を出さなくても大丈夫みたいです。

 もちろん、住宅整備事業の報告もしています。


「じゃあ、基点になる場所を決めて、地面を平らにした方が良いですね」

「うむ、そうだね。測量担当のものを連れてきているから、少し待ってくれ」


 カチャカチャと、何かの器具を使って測量している人たちがいます。

 前世でも通りの測量をしていた人がいたけど、この世界でもやっていることは一緒なんだね。

 その間に、空間魔法が使える僕、スラちゃん、ポッキーが他の人たちを呼び寄せます。

 ちなみに、見学も兼ねてナッシュさんとローリーさんも来ています。

 そして、三十分後、基点の場所が決まりました。


「お館様、こちらに代官邸を置くことになります。四方に大通りを作りますが、街道に通じる通りは広めにします」

「ふむ、計画通りだな。じゃあ、次の作業を行うとするか」


 辺境伯様の確認も終わったので、次は僕とスラちゃんが作業を行います。

 最初に、護衛の兵に町の四方が分かる位置に立って貰いました。


「じゃあ、スラちゃんやるよ!」

「リズもお手伝いする!」


 僕が声をかけると、スラちゃんは僕の横で触手をフリフリとしています。

 リズとプリンは、僕とスラちゃんへの魔力供給係ですね。

 ではでは、さっそく始めましょう。


 シュイン、シュイン、シュイン。

 ズゴゴゴゴゴ!


「おお、なんという魔法なのだろうか」

「流石はアレク君たちだ。双翼の天使様というだけあるね」


 僕とスラちゃんの土魔法を、合体魔法を使って周囲に広げていきます。

 目印があるから分かりやすいし、普段通っている街道の土の硬さも分かります。

 グロスターのおじいさまと辺境伯様がとても驚いていたけど、このくらいなら全然問題ありません。

 ついでに、四方に伸びる道の目安も付けてあります。

 五分もかからずに、僕たちは地面をならし終えました。


「ふう、こんな感じです。平らにして、地面も硬くしています」

「問題なさそうだね。じゃあ、休憩にしようか」


 作業を始めてまだ一時間経っていないけど、作業工程を確認する為に休憩を入れることになりました。

 でも、周囲になにもない平らなところなので、休めるところを作ります。


 シュッ、ドサッ。


「わあ、スラちゃんがお家を出したよ!」

「何かに使えるかもって、競売に出されていた家を買ってアイテムボックスに入れていたんだって」


 エレノアは大興奮しているけど、大人は呆気に取られていた。

 スラちゃんの財力なら、家を千個買っても余裕でしょう。

 さり気なく、ポッキーが悔しがっていたけど。

 さっそく、二階建ての家の中に入ります。


「ふむ、寝具にテーブルに魔導具も完備している。町作りの拠点としても使えるな」

「スラちゃんが、使ってオッケーだって」

「では、ありがたく使わせて貰おう」


 住む分には全く問題ないので、スラちゃんの好意で拠点として使うことになった。

 作業員が寝泊まりする場所も必要だよね。


「前に仮設住宅を土魔法で作ったんですけど、作業員の宿泊施設に使えそうです」

「例の災害のあったところで作ったものだね。護衛の宿泊施設にも使えそうだ」


 ということで、場所を指定してもらって土魔法で宿泊施設を作ることにしました。

 不要になったら取り壊せばいいし、扱いもとても簡単です。

 そんな中、グロスターのおじいさまは逐一王城に報告をしていました。

 そして、ローリーさんがみんなにお茶を淹れてくれます。

 ちょっと休憩しましょう。

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